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【インタビュー】東京交響楽団の若きコンマス小林壱成の「在り方」

公開日:2023年02月09日
【インタビュー】東京交響楽団の若きコンマス小林壱成の「在り方」

近年、さらなる盛り上がりを見せる東京交響楽団。
音楽監督ジョナサン・ノットをはじめ、2021年にコンサートマスターに就任した小林壱成氏が注目を集めているようです。
1994年⽣まれ。東京藝術⼤学卒業。同⼤学院を経てドイツ・ベルリン芸術⼤学 ⼤学院修⼠課程修了。Gyarfas Competition (ベルリン)最⾼位受賞、在学中、Symphonieorchster der UDK Berlin のコンサートマスターとしてヨーロッパ各国で演奏と、数々の実績と経験を積んできた彼ですが、穏やかで人当たりの良い性格や、懐の広さ、思慮深さから次世代のリーダーの姿を目の当たりにしたようでした。

さらに、コンサートマスターとしての活躍のみならず、銀座王⼦ホールレジデント「ステラ・トリオ」など、室内楽等の活躍も期待されています。
今回、サロンコンサートならではのトーク付き&QA付き、さらに調性にフォーカスした特別なプログラムに込められた想いなどを語っていただきました。



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小林壱成ヴァイオリンリサイタル 2023年2月26日(日)  15:00開演
ハイドン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Hob.XV:32
ショスタコーヴィチ:4つのプレリュード Op.34より
ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ホ長調 Op.1-12(Roger版)
タルティーニ:悪魔のトリル

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父の転勤がきっかけで出会ったヴァイオリン


小林
もともとソリストになろうとは思っていませんでした。
というのもヴァイオリンを始めた時も、たまたま家にチラシが入っていたからだったんですよね(笑)当時、ちょうど音楽教育が注目されて(脳の発達に良いなど)流行っていた時期で、その前は音感教育を習っていました。ちょうど6歳くらいのタイミングで父親が転勤族だったということもあり、ピアノを買ってしまうと…引っ越しの時とか大変じゃないですか!ということで、ほぼ両親の誘導みたいな感じでヴァイオリンを習うことになりました(笑)

 

 

習った先生が全員コンマスだった


小林
一番最初に習った先生が小島秀夫先生という、N響から広島交響楽団のコンマスになった先生でした。
その先生がジュニアオーケストラをやられていたのがきっかけで参加していたのですが、とにかく楽しかったんです!ジュニアオケを続けるためにヴァイオリンを続けていました(笑)
それから月日が経ち、父が広島から東京に転勤のタイミングで、やはり東京でもジュニアオケに入りたかったので、そこで出会ったのがマロさん(篠崎史紀氏)でした。
マロさんが主宰する東京ジュニアオーケストラソサエティでオケの活動を楽しんでいました。振り返ると、自分が習っていた先生が偶然、全員コンマスだったので、自然に自分もコンマスを意識したのかもしれません。

スタッフなるほど!
最初の先生もコンマスで、その後もN響コンマスのマロさんが開催するジュニアオケにたまたま入られるとは、何か運命を感じますね。

小林:そんなに誰もがなれる仕事ではないですし、適性などもあり、コンマスは日本中に足りていない現状があります。ですので、運が良かったということもありますが、自然とコンマスの仕事に魅力を感じるようになっていました。

スタッフそうですね。どのオーケストラのコンマスを見ても、その人に代わる人がいないなぁと思わせる確固たる何かを持っていると思います。ですので人材として少ないというのは納得できます。

 

 

 

パイロットか、料理人になりたかった?!


スタッフもし音楽家でなかったら何になっていたと思いますか?

小林もともと僕、パイロットになりたかったです!もしくは料理人とかも良いなって思っていました。

スタッフたしかに、音楽家と料理人って似ていますよね!

 

 

 

 

 

コンマスとはなんぞや?!


小林コンマスに就任してから1年と5ヶ月ほどしか経っていませんが、すでに色々と思うことがあります。
どこに行ってもコンマスになるための学校はないですし、コンマスの"在り方"というのも人それぞれです。
組織の指針をリードして立てているような存在なので、在り方が重要になってきます。
もちろん大変な反面、楽しいし面白いけど!

スタッフコンマスの一番必要な適性って何だと思われますか?

小林:一番は色々な考え方を認めることでしょうか。かつ束ねるというのが難しいですね…。
ソリストですと、一人で一つの答えを見つけ出すというか、突き詰める方が多いので、少し違いますよね。

スタッフなるほど!それでは、コンマスとしてメンバーとの音楽作りに際して工夫していることがあれば教えてください。

小林:僕の場合ですが「指揮者と同じことをやらない」ということです。
一つのことに対してリーダーは二人もいりません。統率はするんですけど、同じことはやらない。
指揮者がやりたいことに対して、具体的にどうするかという提案をしたり、もしくは指揮者が口には出さなくても思っていることを察知して、"指揮者にわからないように"団員にお伝えする、とか。その上で指揮者の方に自由にやっていただくことで、良い音楽が生まれる気がします。
もちろん、様々なタイプの指揮者がいるので、どんなパターンにも対応できるよう、色々なパターンを自分の中に入れておく必要があると思います。

スタッフなるほど、まさに要綱役ですね。

小林時には締めるところや、皆を引っ張っていくようなリーダーシップも必要ですが、バランス感覚はやはり一番大事かなと思います。
各オーケストラのコンマスを見てわかるように、皆十人十色ですし、コンマスと一概に言ってもそれぞれの"在り方"がわかりますよね。

スタッフ"在り方"という言葉に、オケの重責を担っていることが伝わります。 
確かに、コンマスの調子によってオケの音がずいぶん変わりますよね?

小林そうです!コンマスが団員に対して合図を送るのですが、そのちょっとした準備によって音が変わるのです。

 

 

 

正解を求めずに、まずは失敗してみる!


スタッフ昔と今では何かコンサートの感動の違いというのを感じます。それは先程のインターネットの普及であったり、情報の供給過多というのも関係していると思います。
昔は情報も限られていましたし、会場で初めて音楽との出会いや何か探り合いがあって、大きな感動があったような気がします。会場でもブラボー!って皆で一体となって感動を爆発させていましたよ。
なので、今は与えられた情報を予習してから行くので、その通りの答えだったら感動するみたいな…ちょっと不思議な感じというか、客観的な印象を受けます。

小林それに付随するかもしれませんが、最近「良い子」が多いですよね?彼らは正解をわかっているから、正解しかしないというか…。
だからブラボーとかも俺が言わなくても、まぁ誰か言ってくれるでしょっていう感じなんでしょうか、、(笑)。もちろん、一概には言い切れませんが。

スタッフあ〜〜・・・要するに、しらけているということかしら?!

一同:!!(笑)

小林何か、問題を起こさないことに長けているなぁって思います。自分も無意識にそうなるかもしれないので気をつけたいですね。

スタッフ失敗してみたり、問題を起こさないと本当の意味で学びはないのに…!まぁ日本人って昔からおとなしいんですけどね。ですが、心の中では熱くなったり涙したりしているかもしれないので…それは各々の表現でもちろん良いとは思うのですが、もう少し感じたことを素直に表に出してくれると嬉しいですよね…!

 

 

 

 

 

散歩で自然を感じる


スタッフ演奏や練習のリフレッシュのために何をされていますか?

小林:散歩が一番好きですね。その時、絶対にケータイを持って行かないようにしています。これはもう留学時代からの習慣ですね。

スタッフそれは考え事をしながら、頭を整理するためとかでしょうか?

小林考え事というよりかは、自然を見たり感じたりすることが多いです自然豊かな川の辺りを歩いていると、何か別世界に来ている気分になりリフレッシュになります。


 

アンサンブルは自然に起こる化学反応を大切に


スタッフそれではコンマスとしての小林さんではなく、今回のような室内楽でアンサンブルに取り組むうえで、大切にされていることは何ですか?

小林:あまり決まり事を決めないということですかね。特に今回のようにデュオの場合、ピアニストの方はいわゆる"伴奏"のような立ち位置でヴァイオリンについて行こうとする方が多いと思います。例えば、フレーズの終わり方などをリハーサルの段階であらかじめ打ち合わせをして、音楽作りをして行くのが一般的かと思います。
しかしあえて、あまり言葉を使わずにお互いに感性を研ぎ澄まして、自然にやってみることを大切にします。今回ご一緒させていただく小澤さんは自然さを大切にしつつ、彼女の音楽をぶつけて来てくれるタイプのピアニストなので、化学反応が楽しめると思います。

スタッフなるほど!音楽は言葉を超越していますので、自然さというのは何かわかる気がします。というのも、聴き手も不自然さに対しては敏感です。時間芸術である音楽ならではの化学反応ですね。

 

 

 

 

十字架の持つ"緊密性"


スタッフ今回の内容は、サロンという空間に合わせたトーク形式であったり、調性にフォーカスされていたり、大変考え抜かれた内容だと感じられます。プログラミングのポイントや聴きどころ、サロンコンサートの愉しみ方などがありましたら教えてください。

小林僕はカトリックなので、小さい頃からミサに行ってお話しを聞いたり侍者をやっていたりしました。
その時に一番目に入ってくるのが、十字架だったんです。十字架があることで司教さまがお話しされることに説得力をもったり、考え方がまとまってきたり、同じ方向を向いていたり、お互いの緊密性を感じることがありました。
今回でいえば、小品がたくさんありますが、そこにまとまり感というか、緊密性が生まれると感じました。特にこちらのサロンは舞台もフラットですし、縦だけでなく、皆が横でも繋がれば良いと感じます。特に今回はハイドンやタルティーニであったり、その時代の人は、特に調性にこだわってきたと思いますので、そういったところもプログラミングのポイントかなと。

 

 

 

ただただ良い演奏を追求し、高めていくだけ


スタッフプロとしてクラシック音楽に関わる上で、お客様にどのようなことをお伝えしたいと思っていますか?

小林:正直、お伝えしたいと思うようなことって自分たちができることではないと思っています。各々が各々の"何か"を感じ取っているのだと思います。
例えば音に感動する人や、フレーズに感動する人、逆に何か違和感を感じる人…一つの演奏でも様々な受け取り方が生まれます。
僕らはただただ良い演奏を追求し、良いものをただ高めていくだけです。聴き手の皆さんが何を感じ、何を思うかは僕らが干渉すべきことではないと思います。

スタッフ聴き手に委ねる、ということですね。とても共感します。
私たちも企画を考えてお客様にお届けする立場ですが、どんなに一生懸命準備してやってきても、刺さらないお客様だっていらっしゃいます。それはお客様のタイミングであったり、その人がその作品に対する絶対的なイメージであったり、何か引っ掛かりのような疑問に思ってしまうことも多々あると思います。しかし一生懸命やっている以上、決して悪い音楽というのはなくて、それはそれで一つの愉しみ方なのかなとも思います。

小林そうですね。もし感動ではなく、疑問に思うことがあったとしたら「なんでだろう?」って一歩先まで行っていただけると尚、嬉しいですよね!

スタッフそうですね!そういう意味では自己啓発に近いものもあるというか…やはりクラシック音楽は次元の高い芸術だなと思います。

小林最近はインターネットの普及によって、エンタメも多様化し、何でも受け取れてしまう時代になってきました。なので、受け取るだけで終わっちゃうのはもったいないなぁと思います。こういったサロンでトークや双方のコミュニケーションを取ることで、お客様も参加し、お互いに心を通わせた演奏会ができるのは貴重な機会ですし、僕自身とても楽しみです!そして、そういったところに不要不急じゃないクラシック音楽の本当の意味があると思っています。

スタッフ素晴らしいですね。とても共感します。それでは今回の演奏会もそうですが、これからの抱負をお伺いできますか?

小林いや〜、僕はこう見えて真面目なところがあるので…(笑)一つ一つの演奏会を全力でやっていきたいですね!

スタッフすごく尊いことだと思います。当たり前なことだけど、当たり前なことを続けられるのが、本当に凄いことだと思います。
今回、こうやってやりとりをさせていただいている中でも、小林さんのお人柄や、本当に良い演奏会にしたいという思いが伝わってきて、背筋が伸びる思いです。

 

 

 

 

 

クラシック音楽とは何だと思いますか?


スタッフ最後に抽象的な質問ですが、クラシック音楽とは何だと思いますか?

小林:伝承の一部ですよね。それこそ人間の歴史というか…その時代がわかるものだと思うので、その時代に何が流行っていて、どういう音楽が流行っていて、それらがどういう絵画や文学と繋がっているか…。さらにその当時の人々の考えていたこととか流行っていたことなどが、見えてきます。それを後世に伝えることで、人間がどういう風に歩んで来たかというのを、音で実体験することだと思います。そういった時代背景を実体験することで、気づきが生まれ、作曲家が本当に伝えたかったことがわかることがあります。

スタッフなるほど!まさに普遍的なものですね。しっくり来ました。私もこの仕事をしていると、クラシック音楽とは何だろう?と考えることがあるのですが、時代背景や当時の文化的背景、作曲家の縦と横の情報をある程度よく「わかっている人」だけが楽しめるのがクラシック音楽なのかな?と思うことがありました。もちろん、そういった考古学的に背景を探ってみるという側面も大切だと思うのですが、クラシック音楽って膨大なので、堅苦しくなりすぎない方がよいかなとも思います…。もっと純粋に、何の情報もない時に聴いた交響曲の感動とか、何かよくわからないけど共鳴する作品とか、そういう楽しみ方も大切な気がします。どちらの面も総じて、伝承の一部であり、普遍的なものかなと思います。

 

 

 

 

 

(2023年1月25日収録。文責、見澤沙弥香)

 

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小林壱成ヴァイオリンリサイタル

東京交響楽団コンサートマスター小林壱成が初登場!
調性の十字架によって描かれる美しきプログラム
              (トーク、Q&A付き)


2023
年2月26日(日) 開演15:00
渋谷美竹サロン

公演の詳細はこちらから

 

 

 

<プログラム>

ハイドン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Hob.XV:32
Haydn: Violin Sonata Hob.XV:32  G-dur

ショスタコーヴィチ:4つのプレリュード Op.34より
Shostakovich: Vier Präludien op.34

ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ホ長調 Op.1-12(Roger版)
Händel: Violin Sonata in E-dur (Roger), Op.1-12

タルティーニ:悪魔のトリル
Tartini: Devil's trill Sonata g-moll



 

<プロフィール>

小林 壱成(KOBAYASHI Issey)Violin

東京藝術大学卒業、同大学院を経てドイツ・べルリン芸術大学大学院修士課程修了。Gyarfas Competition 2019(べルリン)にて最高位受賞。ドイツでProf. M.Contzen、A. Barakhovsky に、 また室内楽をアルテミス・ カルテットに学ぶ。
⻘山音楽賞新人賞、日本音楽コンクール、松方音楽賞他、入賞受賞多数。 野村財団、明治安田 QOL文化財団、RMF等奨学生。 これまでにNYCカーネギーホール、イタリア世界遺産テアトロオリンピコ・ヴィツェンツァ国際音楽祭、ヴェンゲーロフ・フェスティバルTokyo、「東京・春・音楽祭」、V. レーピン監督の「トランス=シベリア芸術祭」、NHKFM「リサイタル・ ノヴァ」BSTV「クラシック倶楽部」等に多数出演。
M.ヴェンゲーロフとバッハの二重協奏曲のソリストとして共演。レーピン、ギトリス等の巨匠とも共演を重ね、 2019年にはべルリンにてドイツの名匠 S.ヴァイグレに才能を高く認められ、読売日本交響楽団と共演。
2017年より銀座王子ホール・レジデント「ステラ・トリオ」メンバーとしての活動を開始。
各楽団のゲストコンサートマスターとして活躍し、現在東京交響楽団コンサートマスター。

 

小澤 佳永(OZAWA Kae)Piano

小学生から高校生まで、父親の仕事でアメリカ合衆国、イリノイ州にて過ごす。東京芸術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を経て同大学大学院修士課程ピアノ専攻修了。現在同大学管打楽科演奏研究員。
ヴィオッティ・ヴァルセジア国際ピアノコンクール第三位受賞。ペオリア交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団と協演。中日賞受賞。
サントリーホール室内楽アカデミー第1-3期生。サントリーホール、チェンバーミュージックガーデンに出演。第90回日本音楽コンクール特別賞受賞。宗次エンジェルヴァイオリンコンクール、日本木管コンクールにて公式伴奏を務める。