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黒川侑&伊東裕に聞く クラシック音楽と弦楽器の魅力──【Q&A】後編

黒川侑&伊東裕に聞く クラシック音楽と弦楽器の魅力──【Q&A】後編

楽器との出会い、そして今、演奏家としてーー。 
前編では黒川さんと伊東さんにとって天に導かれたともいえる楽器との出会いから、舞台裏の素顔までたっぷりと語ってくださいました。
(前編→https://mitakesayaka.com/news-22.html

後編では、留学生活についてや、芸術家らしいオフの日の過ごし方まで(?!)
さらに、演奏会で"弦楽器の魅力"を伝え続けるお二人ならではのクラシック音楽の本質に迫る内容を語っていただきました。

 

 

 

謎に包まれたクラシック音楽ならではの魅力 


— クラシック音楽の魅力や本質はなんだと思いますか?

 

黒川僕は個人的にクラシック音楽には、自分自身が変化することでいつも違う何かを感じることができる、積み重なる層の厚さのようなものがあるのではないかと感じます。
日々色々な演奏を聴いている中で、あるとき急に“こういうことだったのか!”と何かにピンとくる瞬間を感じるのは、長い時間をかけて残ってきたクラシック音楽の魅力の一つではないかなと思います。

 

スタッフなるほど。それはクラシック音楽の大きな魅力ですね。不思議ですが、あとから気がつくんですよね〜。

 

黒川小説や絵などにも通じる部分があるのではないかと思いますが、時間をかけて深く納得にたどり着くような気がします。
もちろん、自分のそのときの精神的なものもあると思いますが。

 

スタッフたしかに、クラシック音楽は深みが違いますよね。
別のジャンルですが、映画なんかでも、観ると感情移入して楽しかった〜と思うのですが、一年後に内容を忘れちゃうことって多々あるんですよ(汗)ただ、名作に出会うとそうはなりません。名作は単なるエンターテイメントではなく“芸術”だからではないでしょうか。そういう意味では、クラシック音楽はまさ“芸術”です。自分にとって“これは…!”という音楽に出会うと、その音楽をずっと覚えていたり、もう一度聴いてみたくなる、さらに発見がある、というのが、クラシック音楽の深さのように感じます。

 

黒川ある種の他のジャンルの音楽でもそういう部分があるものはもちろんありますが、クラシック音楽のそういう感覚は僕にとってとても大事なものです。

 

スタッフ伊東さんはどう思われますか?

 

伊東:クラシック音楽は他の音楽よりも色々な知識が必要だなと思います。自分の中で積み重ねていくのもそうですが、聴いている人も同じように積み重ねによって聴き方が変わってきます。だからこそ、歳を取ってからハマる人も結構いますね。おそらく、その人の人生経験とか、聴き始めてからの知識とかでどんどんハマってもっと聴きたくなるということなんだろうなと。そういうのって、他のジャンルと比べて特徴的で魅力かなと思います。

 

スタッフ皆さんそうやっておっしゃいますが、とても納得です。クラシック音楽は人生を通して楽しめますよね。

 

 

 

 

こだわりと知性、そしてあたたかさを感じられる巨匠たちに魅了されて

 

— 好きなヴァイオリニスト、チェリストや目指している演奏家はいらっしゃいますか?

 

黒川僕はヴァイオリニストで一人選ぶとすればグリュミオーです。指揮者でいえば、ラファエル・クーベリックとかバルビローリとかジュリーニとか、チェリビダッケもそうですけど、あたたかくまっすぐに感じられる演奏を個人的に好きになることが多いです。

 

スタッフわかります。クーベリック好きなんですね。私、クーベリックのモーツァルトがとても好きです。

 

黒川素晴らしいですよね。あとは、ピアノはR.ゼルキンとかリヒテルとかゲザとかハスキルとかクリーンとかデムスとか…あぁ、いっぱいいすぎますね(笑)

 

スタッフピアノの巨匠は本当にいっぱいいますよね!

 

 

黒川:逆にいうと、あまりに凄まじく弾けてしまっている感じが聞こえると、単純な一聴衆という立場でいくとあまり繰り返し聴きにいこうと思えないこともあります。もちろん皆凄まじく弾けている上での音楽なのですが。

 

スタッフわかるなぁ〜!伊東さんは好きなチェリストはどなたかいらっしゃいますか?

 

伊東:イッサーリスが好きです。彼は本当に素晴らしいです。ライブを聴きにいくと、ガット弦を使っているからか、あんまり聴こえないと皆さん言うのですけど、録音は本当に素晴らしいですね。今生きている人で最高のチェリストの一人だと思います。本当に神様だと思っています。

 

スタッフへぇ〜!

 

黒川素晴らしいですよね。イッサーリスのTwitterも面白くて(笑)、彼のツイートを見ていると、知的度合いがものすごくて驚かされます。

 

伊東:すごいですよね!

 

黒川あとは、Twitter繋がりでいうとピアニストのスティーヴン・ハフっていう人も素晴らしいです。とにかく、そのお二人の演奏家は素晴らしいです。

 

伊東よく一緒に演奏もしていますよね!
イッサーリスって、CDの時もピアニストを選ぶんですよ。いつもこの人、っていうのはなくて。曲によって違って、それでアンサンブル度も本当にすごくて。一番その曲に合うピアニストを探して、どの瞬間もこだわりを持って録音に臨むんですよね。響き、音とか、そういうのを超えたレベルで、音楽的で、本当に素晴らしいです。それこそどの瞬間も…。

 

黒川どのCDも本当に素晴らしいです。

 

スタッフそれは、今どき珍しいタイプの演奏家ですね。他にはどういうところが好きなんですか?

 

伊東あとは本当に知的で、でも知的さを押し出しているわけではまったくなく、音楽にマッチしているんですよね。聴いていて本当に勉強になるし、あんなに生き生きして弾けるっていうのも本当にすごくて…。あとは、作曲家を本当に尊敬しているなというのを感じる演奏ですね。なので、おごりがまったくないです。

 

 

 

 

オープンマインドとゆっくりとした時間の感覚

 

— 海外留学の中で、大きな発見や気づきを得たエピソードがあれば教えてください。

 

黒川うーん…まず最初に気づいたのは、多くの学生が、クラスコンサートでもやりたいままに楽しく弾いているということですね。

 

伊東:あ、それめっちゃありますね!オープン!

 

黒川留学して最初に行ったクラスコンサートでそれを感じました。
技術的なこととは全く別の部分として自分のやりたいことをやっていて、すごいなと思いましたね。

 

伊東:そうそうそう!“自分がやりたいこと”を一番大切にしていますよね。
上手い下手とかは誰も気にしていなくて、どれだけ自分がこの曲をこう弾きたいと思って弾いているのかを一番大切にしているし。
聴いている生徒も、指が動くかとかそんなものは誰も気にしていなくて、「君のこういう解釈や演奏がすごく好きだ」とかを必ず伝えてあげていました。“良い悪い”ではない、そういった部分を大切にしているところが、一番の違いを感じましたね。

 

 

スタッフ自分を持っているっていう意味で、日本人との違いがありそうですね。それはとても良い気づきだと思います。そして、その場にいないとわからない空気感だと思います。

 

黒川当たり前のことかもしれませんが、技術量と音楽性が全ての場合に比例するものではないという自然な感覚は、向こうにいて身についたもののように思います。

 

スタッフへぇ〜!それは本当に大事なことですよね。
ちなみに、生活面では違いを感じる部分はありますか?

 

黒川空気の感じが全然違うよね、湿気とか。

 

伊東それは違いますね、やっぱり。

 

黒川:それからやはりヨーロッパでは実感として、自分が立っている地面の向こうには、いくつもの違う国があるということも感じます。シューマンに『見知らぬ国と人々』という小品がありますが、そういう感覚も何となく日本とは違うんだろうなと思いますね。

 

スタッフなるほどですね。

 

黒川:電車に乗っていたら国が変わっちゃうっていうのは面白いですよね。

 

スタッフそうですね。日本みたいな島国だとありえないですからね。それはやっぱり、現地の音楽を演奏するうえでのインスピレーションを得られますか?

 

黒川自分の中で直接関係があるとは言い切れないですが、やっぱりヨーロッパには何百年も前の建物が普通に残っているので、作曲家が生活したのがこういう雰囲気だったんだろうっていうのは日々感じます。

 

スタッフそうですよね。日本ではそれは気づけないことですもんね。伊東さんは、生活するなかで日本と違う部分を感じたり、影響を受けたエピソードは何かありましたか?

 

伊東僕は留学先がザルツブルグで、都会ではなくて、割と裕福なご高齢の方が多い街で、治安も良い場所に滞在しているのですが、空気感がすごくゆったりとしていますね。
食事をするにしてもそれを楽しみ、散歩も楽しみ、休日も楽しみ…何をするにも楽しんでいる空気がありました。スーパーは8時くらいの早い時間に閉まるけど(笑)

 

スタッフなるほど!ゆっくりと時間が流れていて、楽しむことを大切にしていて…その空気感がなんだか心地よさそうですね。

 

伊東そうですね、何をするにも “ちゃんと楽しむ”姿勢がいいなと思いました。散歩も食事もちゃんと楽しむ、っていう。

 

スタッフそうですね。東京にいるとせかせかしちゃいますもんね(汗)

 

 

 

 

音楽家はオフの日もインドアに過ごす?!

 

— 練習以外の時間ではどんな過ごされ方をしていますか?

 

黒川えーと、やることが何も無ければ読書したり映画を見たり、後は掃除をしたり…というとまるで暇人のようですが(笑)でも家にいる時は大体音楽がかかっています。

 

 

スタッフかかっている音楽はクラシック音楽ですか?

 

黒川はい。家では大体はクラシックを中心に聴いていますね。iTunesにCDの曲を全部入れて。
その時に、iTunesで曲を並べ替えられるので、それで次のプログラミングを考えたりもしています。

 

スタッフなるほど。そういう状況というのは、ある意味、常に仕事をしている状態ですね。

 

黒川どうなんでしょうね、僕は完全に趣味で聴いているので。

 

スタッフ良く演奏家さんで練習自体がインドアなので、反発してオフはアウトドアになる人もいらっしゃるようですが、黒川さんは基本インドアというか…?

 

黒川:インドアですね!(笑)ただ演奏会に行くためにはもちろん外出しますね、パリは特にいい演奏会がとても多いので。

 

スタッフそうですか。趣味で読書とおっしゃっていましたが、最近、読んだ小説は何ですか?

 

黒川わりと海外小説を読むのですが…一番最近読んで印象に残ったのはマリリン・ロビンソンっていう人の『ハウスキーピング』とか、レアード・ハントの『優しい鬼』とか。どちらかというと、イギリスよりはアメリカ寄りの、ストーリーテリングみたいな方が好きです。

 

スタッフへぇ〜!

 

黒川もともと柴田元幸さんっていう翻訳家の方が好きで、その人の訳している小説を片っぱしから読んでいったところから広がりました。
子供の時は星新一やドリトル先生シリーズなんかを読んでいましたが、いわゆる小説は中学校くらいの時に村上春樹を読み始めたのが最初かな。

 

スタッフ:芸術作品ですよね、小説って。

 

黒川もちろんそうですね。ただハッピーエンドでないものも多いので、暗い気分になるばかりの時もありますが(笑)

 

スタッフそれはたしかに…。なんというか、黒川さんは根っからの芸術家肌ですね!
伊東さんはいかがですか?

 

伊東僕は逆に俗っぽいんですけど…漫画がめっちゃ好きなんですよ(笑)

 

 

黒川いやいや、僕も漫画読みますよ!(笑)

 

伊東読みますか? 僕、本当に漫画大好きで。

 

スタッフいや、でも日本の漫画、大したものだと思いますよ!

 

黒川向こうでも翻訳版でたくさん売っていますよね。ベルギーとかフランスはやっぱり漫画が人気で、本屋に漫画コーナーもありましたよ。

 

伊東日本より早く出版されるらしいですよ!最新巻とかそっちの方が早かったりするみたいです。

 

スタッフへぇ〜!!すごいブームですね!伊東さん、漫画は何を読まれるんですか?

 

伊東:結構色々手を出してます(笑)媒体としての漫画が好きなので、わりとなんでも読めるかもしれないです、有名な作品とかも。手塚治虫とか、昔のものはあんまり読んでいないのですが…ブッダくらいですかね。

 

スタッフなるほどですね。新しい作品の方が多いんですね。

 

伊東そうですね。ONE PIECEも読みますし、昔はドラえもんが大好きで、ドラえもんはすごく読んでいました。
ドラえもんは、ちょっとブラックなところがいいんですよ。歳を取ってから読むと結構ブラックで面白いです(笑)

 

スタッフたしかにそうかもしれません!(笑)

 

伊東言っている言葉も結構キツイんですよね!内容もブラックな話もあって面白いです。単行本45巻全部あって、ほぼ何を聞かれても思い出せるくらい読み込んでいました。

 

スタッフそれは…かなり熟読されてますね!(笑)
手塚治虫のブッダはどこで読まれたんですか?

 

伊東ブッダは家にあったので読みましたね。

 

黒川僕も、それは学校の図書館に置いてあったのを読みましたね。あと火の鳥も読みましたが、あんまりにも内容がダークなので忘れちゃったなぁ(笑)

 

スタッフたしかに、ダークなイメージがすごくあります。素晴らしい作品のはずなんですけどね。それも音楽と同じく、合う合わないはあるかもしれませんね。

 

 

 

 

”今できること、やりたいこと”に、ただひたすらに向き合いチャレンジしたい

 

— 今後どんなチャレンジをしたいですか?

 

黒川さっきのこととも繋がりますけど、僕は性格的にも“今できること、やりたいことをやっていく”という部分が大きいので、うまく挑戦できる機会があれば全力でそれをやっていきたいと思います。継続して何かにチャレンジできるような機会があれば嬉しいと思いますが。

 

 

スタッフもし、挑戦できる機会があるとしたら、具体的にはどういうことをやってみたいですか?

 

黒川:リサイタルのシリーズは今一つさせていただいていますが、ベートーヴェンやブラームス集はもちろんやってみたいですし室内楽も…とにかく、まだやっていない曲もいっぱいあるので、色々試してみたいですね。

 

スタッフあと、色々な作曲家の組み合わせとかも面白いですよね。今回も、すごく珍しいプログラムですよね。コダーイのあの曲は難しいのでなかなか聴けないというイメージだったのですが。今回の曲目もそうですが、“弦の響き”という、テーマを大枠で決めてシリーズにしていくのも面白いなと、個人的には思っています。

 

黒川そうですね。テーマに沿ってプログラミングするのは、こちらも楽しそうです。

 

スタッフ演奏会って、料理に似たところがあるなと感じます。例えば、当サロンの名誉顧問の横山幸雄先生の演奏会に行った時、高級なレストランで一流シェフの手によるコース料理を食べた感じのような満足感があったんですよね。それが記憶に新しいのでそういう風に感じました。上手に組み合わせていて、メインがあって、アンコールもデザートみたいに添えてあって…っていう。

 

黒川そうかもしれませんね。

 

スタッフ伊東さんはいかがですか?

 

伊東:チャレンジっていうと変かもしれませんが…留学先で、向こうの人たちが大切にしている部分を、もうちょっと自分も身につけたいなと思います。いろんな意味でオープンに何かを伝えたり、人と話したりできるようになりたいなと思っているところです。舞台でも対人関係でも、何においても、もう少しオープンになりたいです。それをチャレンジっていうと違うかもしれませんけど。

 

スタッフなるほど。たしかに、それが引き金でいろんな情報が得られて音楽の幅も広がっていきそうな印象ですね。

 

伊東はい。今かなり足りていないと感じているので…。向こうに行って一番言われるところです。(汗)

 

スタッフ:全然そんな感じしませんけどね!すごくフレンドリーで。
留学先の周りの人は伊東さんよりもさらにオープンということですか?

 

伊東そうですね!イタリア人の先生に習っているので、まず先生はめちゃくちゃオープンです。生徒もイタリア人が多くて、恥ずかしさとかが一切ないんですよね。
レッスンを聴講していても、本当にそれを感じます。自分は結構、日本人っぽいって言われるんですよね。やっぱりそういう部分は羨ましいので、変えたいなとすごく感じています。

 

スタッフなるほど。イタリア人は、言葉が通じようが通じまいがアピールがすごいですよね!(笑)いいですよね、楽しそうな感じで。

 

伊東音楽も、聴いていてやっぱり楽しいので…自分がレッスンを受けている時は、いつもすごい引け目を感じてしまっていて。聴講している人が常にいるのですが、雰囲気もちょっと違うなっていうのを最近すごく感じちゃいます。チャレンジじゃないですけど、今後なりたい姿として、思い描いています。

 

スタッフずっとその環境にいると、慣れてそういう風になっていくんじゃないかなって思いますけどね。

 

伊東あとは、その人の性格は音楽に色濃く出ちゃうものがあるので。私生活から変えるのも結構大事だったりするのかなとか、いろいろと日々考えながら過ごしています。

 

黒川なるほど。僕は周りの環境が身になるまでに本当に長い時間がかかってしまうので、確かにそうかもしれないですね。ただもう僕は、本当にもとがこれ、という感じなのでなかなか変わりません…(笑)

 

スタッフそれは個性だと思うので、いいと思います!むしろ、それを強みにされていってほしいと思います!

 

   一同:(笑)

 

 

 

モーツァルトはオーストリア、イザイはベルギー、カサドはスペイン、そしてコダーイはハンガリー、というように、各作曲家の"音楽のナショナルカラー"を紡ぐ。


— 今回の演奏会(2019年1月6日)のプログラムのそれぞれの聴きどころを教えてください。

 

  

コダーイ: 二重奏曲 Op. 7について──

 

伊東:今回のメインのコダーイの二重奏曲ですが、アンサンブルの曲としてかっちりと合わせるというよりは"可能性"がどこまでも広がっていくような曲だと考えています。可能性というのは8本の弦の可能性もありますし、ハンガリーの民謡風の歌であったりリズムであったり、曲の可能性もそうですね。
8本の弦とは思えないほどのスケールの大きさがあるというのが、この曲の一つの大きな魅力だと思います。コダーイといえば、超絶技巧でも有名なチェロの無伴奏の曲がありまして、当時から本当にチェロ一本で演奏しているのか、と疑われるほどでした。
そういった意味でも、コダーイの曲というのは楽器を超越したイメージがあります。

 

黒川:コダーイといえば"民謡"というのは大きく外せない要素で、民謡独自の"歌い方"があるような気がします。なんと言いますか...土の匂いが感じられるような。 有名な二重奏では他にラヴェルのヴァイオリンとチェロのデュオ曲もありますが、練習していても、同じ8本の弦から出てくる音楽がこんなに違うのかと感じてしまいます。今回の、ヴァイオリンとチェロのみという組み合わせの演奏会というのは珍しいので、他の室内楽とは違った弦の響きであったりですとか、特色ある"音色"の発見をしていただけると思います。

 

 

 

W.A.モーツァルト: 二重奏曲 ト長調 KV423について──

 

伊東この曲はもともとヴァイオリンとヴィオラのために作曲されました。今回はヴァイオリンとチェロと、ということですが、コダーイとはまた違って、室内楽的な楽しさが詰まった曲だと思っています。ところどころで掛け合いがあり、弦楽器2本だけなのに、物足りない感じもなく、モーツァルトの優美な世界が堪能できる一曲です。

 

 

イザイ: 無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番 イ短調について──

 

黒川イザイ自身がヴァイオリン弾きだったこともあり、6曲ある無伴奏ヴァイオリンソナタはどれも、かなり技巧的に派手に作曲されています。
今回の曲は各々の楽章に題名がついていて、例えば第1楽章は"妄執 "(Obsession)です。この楽章のみでなく、曲全体を通してバッハの無伴奏パルティータやグレゴリオ聖歌「怒りの日」のセンテンスが引用されているのですが1楽章だけを見ても、バッハや聖歌に対する、イザイの作曲家としての"妄執"があったのかもしれないと想像できます。
また冒頭のバッハのセンテンスが"聖"としたら、イザイの部分が"俗"といいますか、"聖"と"俗"の入れ替わりみたいなものも表現されていると感じます。例えば、2楽章は聖歌のイメージで、逆に3楽章は民族的な世俗曲というイメージですし、そういうのを行ったり来たりするというような曲ではないでしょうか。そういう意味では、とても面白い特殊な曲だという印象を持ちます。

 

 

カサド: 無伴奏チェロ組曲について──

 

伊東:カサドは作曲家というよりはチェリストなので、この無伴奏チェロ組曲はチェロという楽器の特性を上手く活かして作曲されています。スペイン人だったので、スパニッシュな色もかなり出ています。
この曲は短いですが、それぞれの楽章のキャラクターがはっきりしています。3楽章なんかはまさにスパニッシュダンスです。それがチェロ一本で(響きの面であったり)うまく描かれているなぁと思います。
弾いていて、やはりカサド自身がチェリストだな、と思う箇所がたくさんあります。
聴いていて映える曲だなぁと思います。

 

 

スタッフ黒川さん、伊東さん、ありがとうございました!
来年1月の演奏会が待ち遠しですね。



(以上。2018年8月美竹清花さろんにて収録) 

 

 

 



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黒川侑&伊東裕デュオコンサート


8本の弦の可能性に迫るーー
ヴァイオリンとチェロのための至極の二重奏。

 

2019年1月6日(日) 開演18:00
美竹清花さろん 


公演の詳細はこちらから

 

 

 

<当日プログラム>

W.A.モーツァルト: 二重奏曲 ト長調 KV423
E. イザイ: 無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番 イ短調
G. カサド: 無伴奏チェロ組曲 (11)
Z. コダーイ: 二重奏曲 Op. 7

 *プログラム等は、やむを得ない事情により、 変更になる場合がございます。

 


<プロフィール>

黒川 侑(くろかわ・ゆう)Violin

2006年日本音楽コンクール第1位、岩谷賞(聴衆賞)他3つの特別賞を受賞。2015年ルドルフォ・リピツァー国際ヴァイオリンコンクールでAnna Piciulin特別賞、2016年仙台国際音楽コンクールで聴衆賞を受賞。
これまでにスイス・ロマンド管弦楽団、スペイン国立管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、京都市交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団など国内外のオーケストラとの共演、リサイタルなど多くの演奏会に出演。京都市交響楽団定期演奏会(広上淳一氏指揮)での演奏がCD「名曲ライブシリーズ」に収録された。
また国際音楽祭ヤング・プラハに招待され、ファイナルコンサート(ドヴォルザークホール)で、プラハ室内交響楽団と共演。その後再度招待され、ワルトシュタイン宮殿を始め、チェコ各地で演奏会に出演して高い評価を受ける。
ウィーン、ブリュッセルで研鑽を積んだ後、桐朋学園大学院大学(修士課程)修了、現在エコール・ノルマル音楽院で勉強を続けている。
工藤千博、P.ヴェルニコフ、漆原啓子、堀米ゆず子、藤原浜雄、S.ルセフ、F.シゲティの各氏に師事。
倉敷市芸術文化奨励章、岡山芸術文化賞グランプリ、音楽クリティック・クラブ賞奨励賞、京都府文化賞奨励賞、京都市芸術新人賞、青山音楽賞、出光音楽賞を受賞。


伊東 裕(いとう・ゆう)Cello

1992年奈良県出身。6歳よりチェロを始める。日本演奏家コンクール小学生部門第1位およびグランプリ受賞。泉の森ジュニアチェロコンクール小学生部門および、中学生部門金賞。大阪国際音楽コンクール中学生部門第1位およびジャーナリスト賞、大阪府知事賞受賞。第77回日本音楽コンクールチェロ部門第1位および徳永賞受賞。生駒市市民功労賞受賞。京都フランス音楽アカデミー、草津夏期国際音楽アカデミー、クールシュベール夏期国際音楽アカデミーなどのマスタークラス受講。長岡京室内アンサンブル、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、神戸市室内合奏団ほか、多くのオーケストラと協演。小澤国際室内楽アカデミー、音楽塾オーケストラ、また中之島国際音楽祭、いこま国際音楽祭、武生国際音楽祭などに参加。朝の光のクラシック、兵庫県立芸術文化センターワンコインコンサートなどに出演。
これまでに斎藤建寛、向山佳絵子、山崎伸子、中木健二らに師事。東京芸術大学音楽学部器楽科を首席で卒業、在学中に福島賞受賞。現在、同大学院音楽研究科修士課程に在学中。
トッパンホールには、2015年7月の山根一仁公演、16年6月のジャン=ギアン・ケラス公演にアンサンブルメンバーとして出演している。