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ダマーズのピアノ曲~軽妙洒脱、幸せにひたる~

ダマーズのピアノ曲~軽妙洒脱、幸せにひたる~

 フランス人作曲家ジャン=ミシェル・ダマーズの作品研究をライフワークとしているピアニスト、山田磨依さん。山田さんは2012年から渡仏、ダマーズが2013年に死去した際にはお葬式に参列するほどの、ダマーズ愛の持ち主です(エコール・ノルマル音楽院にダマーズのお葬式のお知らせが貼り出され、その掲示を見て駆け付けたそうです)。

 

 ダマーズという作曲家は、ピアノよりも室内楽曲というイメージの方が強いのではないでしょうか?ピアニストである山田さんは、フルートを奏するお父様がダマーズ愛好家であったため、幼少の頃よりダマーズの曲に親しんで育ったそうです。ダマーズ自身もピアノの名手であり、そんな彼のピアノ曲に愛を注ぐ山田さんは、知られざる名曲を広めようと、精力的に活動を展開しています。

 

 山田さんはフランスから帰国後、2016年より毎年、ダマーズの誕生日にあたる1月27日に生誕記念コンサートを開催されています。今年2019年は、ここ美竹清花さろんで「ダマーズ生誕91年記念コンサート」が行われました!

 誕生祭の幕開けは、1990年に作曲された《ピアノのためのソナチネ》。

 「ダマーズの曲には幸せなイメージの作品が多い」と山田さんが語る通り、花の妖精が舞うような優しい曲でした。第1楽章は常に空気に浮遊する柔らかい右手が、優しく微笑みかけてくるよう。第2楽章は、憂いを帯びた美女を彷彿とさせる曲想。第3楽章はスリリングでありながら自制心を保った演奏で、静かで軽やかな喜びが素敵でした。

 

《出現》(1967年作曲)になると、会場が幻想のムードに包まれ、夕暮れの薄闇にきらめく星のような音が散りばめられました。その美しさに酔っていると、山田さんが紡ぐダマーズの音は星屑のヴェールをといながら、いつのまにか盛り上がっていき、クライマックスを越えると再び音楽が集約していき、最後の一音は空気にとけていきました。

 

 《献呈》は2001年に出版され、その名の通り、ピアニスト兼作曲家のジェラール・ムニエに献呈されています。最初に印象的に「ジェラールの主題」が現れ、最後は素朴なテーマに戻って終わっていきました。

 

 《タランテラ》はメルヘン化されたかわいらしいタランテラで、軽やかに奏されました。《夜明け》は2005年に書かれた新しい曲で、山田さんは「洗練されたダマーズの最晩年の境地を感じさせる」と語っています。左手の和声と右手が絶妙に離れたり寄り添ったりする“ゆらぎ”がお洒落で、ウィットに富んだ演奏でした。

 

 前半の締めくくりは、ダマーズの知られざる名曲《序奏とアレグロ》でした。1992年にロン=ティボー国際コンクールの課題曲として作曲された、華やかな作品です。透明な、キラキラ光るグリッサンドがハープのようで美しく、アレグロ部分の左手は和音の処理が技巧的でした。レコード芸術誌から「的確かつ繊細な技術と感性」と評された山田さんの持ち味が、存分に発揮されていました!

 

 後半、今回のスペシャルゲストであるハープ奏者の中村愛さんが登場しました。

 フランス人形のような美女ですが、マイクを持って話し出すと気さくなお姉さん。山田さんと中村さんは、毎週水曜日の18:00~22:00にお二人でラジオもされており、会場でのMCも楽しい会話が弾みました。

 そんな仲の良いお二人によるデュオは、《記念祭の祝辞》で、有名な“ハッピーバースデートゥーユー(ヒル姉妹作曲)”のメロディーから始まる曲で、今回のダマーズ生誕祭にぴったりでした。

 さらに《フランスの子供の歌(ベール作曲)》のメロディーも登場し、それら有名な旋律を二人が軽妙に掛け合いながら、変奏が進みました。1964年に出版されたオリジナルは二台ピアノのための作品ですが、今回、ピアノとハープという珍しいデュオで演奏されたことで、プリモ(第1パート)とセコンド(第2パート)の音色が聴き分けられ、まさに二人が楽しげに喋っているような親密な演奏でした。

 

 続いては、中村さんのハープソロによる《シシリエンヌ・ヴァリエ》(1966年作曲)。オルゴールのようなシンプルな出だしから、大輪の花が開くように、きらびやかなハープらしいグリッサンドに彩られていきます。堂々たる豊かな響きが広がりました。

 

 この生誕祭のフィナーレは、1957年に出版された《主題と変奏》、主題と13の変奏からなる大作です。

 主題は穏やかな曲想で、変奏が進むにつれ活力が増し、軽やかな重音奏法や、中音域になつかしさを感じるメロディーが登場するなど、多彩な世界が展開されていきます。右手のメロディーに相づちを打っているような左手や、思わずハミングしたくなるような親し気な右手、ハープのような華やかなアルペジオ、ジャズ風のリズム、高音部のきらきらした装飾、独特で不思議な和声…。ラストは、落ち着きのある左手のバスに乗って、純朴な右手のメロディーがたゆたい、幸せにひたりました。

 

 アンコールは、山田さんが猫好きなことから、『おとぎ話』より《長靴をはいた猫》と《白猫》が演奏されました。茶目っ気たっぷりで、本編とはまたちがう魅力を楽しめました!

 ダマーズのピアノ曲が日本でも広く親しまれる日が来ますよう、山田さんのライフワークに期待が高まります!

(2019年1月27日開催)

 

 

<プロフィール>

山田 磨依(Mai Yamada)Piano

1990年東京出身。桐朋学園大学卒業後渡仏、2015年パリ地方音楽院最高課程修了。全日本ピアノオーディション第1位、クロード・カーンコンクール(仏)、大阪国際音楽コンクール等国内外で入賞。
フランス人作曲家J.M.ダマーズの作品研究をライフワークとし、2016年より毎年ダマーズの生誕日に記念コンサートを開催、2017年にはデビューアルバム『ダマーズ生誕90年によせて』をリリース、レコード芸術誌より“的確かつ繊細な技術と感性との持主”と評され高い評価を受けている。
これまでに伊藤悠貴、E.ハーツェル各の下、ナイツブリッジ管弦楽団(英)、カポソカ交響楽団(アンゴラ)他と共演。2016年より毎年ロンドンでソロリサイタルを開催し、フランスやスペインの国際音楽祭へ出演。献呈作品の初演も行い、最近は国内での精力的な演奏活動も本格化、ラジオ各局の番組への出演など、幅広い活動を展開している。
江澤聖子、横山幸雄、B.エイディ、A.ウォス各に師事。
ムジカキアラ所属アーティスト。
公式ホームページ:www.maiyamadapiano.com

 

中村 愛(Megumi Nakamura)Harp

千葉県出身。東京音楽大学卒業。4歳よりピアノを始め、12歳よりハープを始める。
これまでにハープをJ.モルナール、木村茉莉、篠崎史子の各氏に、室内楽を故・島崎説子女史に師事。
第9回大阪国際音楽コンクールハープ部門第3位。
2011年2月に数々の著名音楽家のコンサートを手掛けた故・村上信爾氏のプロデュースのもと、すみだトリフォニーホールにて初のソロリサイタルを開催、好評を博す。
他に茂木大輔氏指揮の室内オーケストラとヘンデルのハープ協奏曲を共演、ロシア・ボリショイ歌劇場トランペット奏者アンドレイ・イコフ氏の日本公演に客演、仙台クラシックフェスティバル2017出演等公演多数。
ソロ、室内楽での活動を中心に群馬交響楽団、ベトナム国立交響楽団、武漢管弦楽団等国内外のオーケストラと共演。
また最近では演奏活動の他、講演会や講義を行うなど活動の幅を広げている。
キングレコードより、2016年ソロアルバム「風と愛」、「クリスマスファンタジー」を、2018年に小宮正寛氏(Cb.)とのデュオアルバム「エレジー」をリリース。
銀座十字屋ハープ&フルートサロン、千葉県立千葉女子高等学校オーケストラ部講師。
東京音楽大学大学院科目等履修修了。