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革新と魅惑に満ちたワーグナーの音楽── その魅力に迫る!

革新と魅惑に満ちたワーグナーの音楽── その魅力に迫る!

今月2/13(土)は「黒岩航紀ピアノコンサート〈オール・ワーグナー(リスト編)・プログラム〉」を開催予定です。

ワーグナーの最高峰の楽劇を、ピアノの表現技法を最大限に活用したリスト編曲により、
サロンという親密な空間いっぱいに多彩な音が満ち溢れ、その世界観を贅沢に体験できることでしょう!
 
ワーグナーファンの皆様、ピアノファンの皆様、オペラファンの皆様、未知の世界を経験したい皆様、是非この機会をお見逃しなく!
 
 
お申し込みはこちら⇨https://pro.form-mailer.jp/fms/7403928b213441
 
 
さて、クラシック音楽を楽しむために欠かせない予備知識ですが、
ピアニスト黒岩航紀さんより、演奏会をさらに楽しむためにプログラムノートをご執筆いただきました。
オペラの勉強にもなりますし、ストーリーや背景を理解して聴くことによって、より一層感動の幅が広がることではないでしょうか。
今回はワーグナーとリストの関係性についても注目したいところです。

音楽評論家の方が書かれることの多いプログラムノートですが、
実際に演奏会に向け、音楽に向き合い追求している音楽家さんでなければ書けない文章があります。

美竹清花さろんでは、日々、作品と対峙する演奏家さんからプログラムノートを執筆いただいています。
 
また今回はご来場いただく皆様へ、黒岩さんからメッセージもいただいております。
是非、ご来場前にご一読くださいませ。

 

 

プログラム 

R.ワーグナー=F.リスト編:
序曲(歌劇「タンホイザー」より)
冬の静かな炉ばたで(楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕より)
聖杯への厳かな行進曲 (舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕より)
ヴァルハラ(舞台祝祭典劇「ニーベルングの指環」序夜 楽劇「ラインの黄金」第2場より)

紡ぎ歌(歌劇「さまよえるオランダ人」第2幕より)
バラード(歌劇「さまよえるオランダ人」第2幕より)
祝典と結婚式の歌(歌劇「ローエングリン」第3幕より)
愛の死 (楽劇「トリスタンとイゾルデ」第3幕より)
 
※一部、黒岩航紀による編曲 
 
 
 
 

ご挨拶


 本日はご来場くださいまして、誠にありがとうございます。
 まずはじめに、世界的に不安と混乱が入り乱れるこのような状況下、今日を迎え開催できること、安堵と喜びを感じております。
 そしてそんな中、足をお運びいただき、お時間をいただける皆様に、心より感謝申し上げます。

 オール・ワーグナーによるリサイタルは、昨年に引き続き、第2回目となります。
 タウジッヒ、ブゾーニ、モシュコフスキといった名ピアニスト、名作曲家による編曲を取り上げ、それぞれの個性やアプローチが光り際立つ大変興味深い会でしたが、とりわけF.リストの編曲にはピアノ編曲技術と技法の秀逸さを感じる次第でした。
 リストは、まさにピアノの魔術師と言われていたとおり、ピアノという楽器の引き出し方や魅せ方を熟知しており、煌びやかさや華やかさを聴き手へ実感させる場面のほとんども、高い難易度はありつつも、無駄のない合理性と演奏効果の高さで成り立っています。例えばピタゴラスの放った「多くの言葉で少しを語らず、少しの言葉で多くを語る」というのは、部分的に、ピアノ作品における見事な技法にも当てはまるのではないかと考える今日この頃です。

 R.ワーグナーの人生や音楽家としての成功と、リストの存在というのは、切り離すことができません。ワーグナーが名声を築く大きな導きとなったのは、リストによるワーグナーの歌劇、楽劇の演奏でした。
 若くして成功を納め、地位と名声を納めていたリストは、2つ歳下のワーグナーに対して、金銭的な援助なども含め、音楽活動のための様々な手助けをしていたようです。
 その親交がきっかけで、リストの次女であるコジマの再婚相手が、ワーグナー(初婚はリストの弟子でもあるハンス・フォン・ビューロー)であったというのも、興味深いことです。この一件があり、絶縁の時期などもあったようですが、生涯その才能と実力を互いに認め合う親友であり、音楽史においてこの2人の天才の出会いというのは、必要不可欠なものです。
 ワーグナーとリスト、今回は2人の天才に迫っていきたいと思います。(黒岩 航紀)

 
 
 
 

プログラムノート

 
◆序曲(歌劇「タンホイザー」より)
 官能的な愛と精神的な愛の間で葛藤する騎士タンホイザーが、乙女エリーザベトの自己犠牲に救済される物語を描いた「タンホイザー」。中世のタンホイザー伝説とヴァルトブルク伝説に題材を取ったワーグナー中期の作品です。
 リストが本格的にワーグナーの編曲に取り組み始めた最初の曲が、この序曲でした。壮大で重厚な響きやオーケストラの色彩、作品の熱量を究極まで追求するあまりに、非常に難易度の高い作品でもあり、リスト自身も演奏にやや苦労したようですが、それだけの気合いと気迫、愛着が感じられます。数ある編曲作品の中でも、高い完成度と規模を持つ特別なものであり、今宵は外せない一曲です。


◆冬の静かな炉ばたで(楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕より)
 主人公は靴職人のハンス・ザックスで、舞台は16世紀ドイツのニュルンベルク。マイスター(職人の親方)たちが集う歌合戦をめぐる物語です。この楽劇のなかで、ワーグナーは規則ずくめの形式主義を批判し、自由な創造性を讃えるとともに、ドイツの国⺠芸術の栄光を賛美しています。第1幕第3場で青年騎士のヴァルターが自己紹介のために歌うのが、『冬の静かな炉ばたで』です。


◆聖杯への厳かな行進曲(舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕より)
 ワーグナーの最後の作品。ニーベルングの指環に付けられた「舞台祝祭劇」という呼称に「神聖」という言葉を加えて「舞台神聖祝祭劇」とした宗教色の濃い作品で、「聖杯」「聖槍」「愛餐」「聖金曜日」など、あきらかにキリスト教の題材を用いていますが、劇中に「キリスト」や「イエス」という名前を一度も登場させていないところに、キリスト教を超えた普遍的な宗教劇として構想したワーグナーの意図がうかがわれます。
 晩年のリストの創作の度合いが高めの編曲に仕上がっています。


ヴァルハラ(舞台祝祭典劇「ニーベルングの指環」序夜 楽劇「ラインの黄金」第2場より)
 「ニーベルングの指環」は序夜と3日間の劇からなる、ワーグナーのライフワークとも言うべき超大作です。作曲はこれだけに専念していたわけではなく、何度かの中断があり、結局1853〜74年まで、21年の年月がかかりました。ちなみにバイロイト祝祭劇場はこの作品を上演するために建てられたものです。
 初演は、1869年「ラインの⻩金」、70 年「ワルキューレ」、76 年「ジークフリー ト」、「神々の⻩昏」と、バラバラに行われました。
 意外にも、その四部作の中でリストが編曲したのは一曲だけでした。唯一取り組んだのが、「ラインの黄金」より『ヴァルハラ』。リストが独自に追加したフィナーレが、大変華やかです。


◆紡ぎ歌(歌劇「さまよえるオランダ人」第2幕より)
◆バラード(歌劇「さまよえるオランダ人」第2幕より)
 ワーグナーが20代後半の頃に書いた、初期の代表作です。初演は3幕形式で上演されましたが、ワーグナーは全曲を通して演奏することを望んだそうで、その意思に基づき続けて演奏されることが多いです。永遠に海をさまよう呪われたオランダ人船長を、乙女ゼンタの愛が救う物語で、この「愛と自己犠牲による救済」は本作以降、ワーグナー作品に共通するテーマとなっています。
 歌劇の中で『紡ぎ歌』と『バラード』は続く場面ですが、リストはこの2曲を全く別の時期に仕上げています。


◆祝典と結婚式の歌(歌劇「ローエングリン」第3幕より)
 「ローエングリン」の完成直後、ヨーロッパでは各地で次々と革命が起こり、ワーグナーが拠点とし宮廷指揮者を務めるドレスデンでも革命が勃発しました。そのときワーグナーも革命に加わり、それが失敗に終わるとワーグナーは革命の首謀者と見なされて、指名手配までされ追われる身となりました。「ローエングリン」の初演は延期どころか、いつ上演されるか予想もつかない事態になりました。
 このようなワーグナーに救いの手を差し出したのが、まさにリストであり、ワーグナーはリストを頼ってヴァイマールまで逃げのびると、リストは偽の旅券まで手配して逃亡の手助けをしました。さらにリストは、ヴァイマールの劇場で「ローエングリン」を初演することに尽力。そのときワーグナーはスイスに逃げ延びていて、上演の成功を祈願していたといいます。この上演がきっかけで、ワーグナーの名前はヨーロッパで知られるようになるというわけです。


◆愛の死(楽劇「トリスタンとイゾルデ」第3幕より)
 中世のトリスタン伝説をもとにワーグナーが台本を作成、1857〜59 年に作曲されました。しかしなかなか上演の機会に恵まれず、ルートヴィヒ二世によって1865年、ミュンヘンの宮廷劇場で初演することができました。
 2人の恋人たちの永遠に許されない不倫の愛を表現するのに、ワーグナーは次々と転調を繰り返し、結局調性を失いはじめます。このオペラは、現代の無調音楽を誕生させるきっかけとなったといえます。当時ワーグナーはヴェーゼンドンク夫人と不倫の仲にありましたが、この作品はその恋によって、革命的な音楽が生まれた音楽誌の上で極めて稀な実例です。
 時代は中世。アイルランドの王女イゾルデは、マルケ王と結婚するためにコーンウォールへの船に乗ります。その船には、迎えの使者としてトリスタンが乗っていました。彼が自分の婚約者を殺した男と知りながら、愛を感じ心惹かれてしまったイゾルデ。
 ならば、いっそ死のうと2人は共に毒杯をあおぎますが、イゾルデの侍女が毒の代わりに愛の薬を杯に入れておいたため、2人は激しい愛に取り憑かれます。
 船はコーンウォールに着き、イゾルデはマルケ王の妃となった後も、夜の闇にまぎれ果てしなく陶酔の時を過ごす2人は、その姿をマルケ王に見つかってしまいます。その結果、トリスタンはマルケ王の臣下の剣に倒れ、深手を負い夢うつつにイゾルデを呼びます。後を追ってきた彼女に抱かれてトリスタンは死に、イゾルデも『愛の死』を歌い、恍惚のうちに生き絶えます。
 まさにその劇的な最後のアリアが、この作品です。
(黒岩 航紀)




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黒岩 航紀 Koki KUROIWA (Piano)
 東京藝術大学首席卒業。同大学大学院修士課程修了の後、リスト音楽院にて研鑽を積む。第84回日本音楽コンクール第1位。第11回東京音楽コンクール第1位及び聴衆賞。KIPA国際ピアノコンクール2019第1位。第13回ヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティション第4位及びオーケストラプライズ。インムジカローマ国際ピアノコンクール2018第3位。第27回青山音楽賞新人賞。第14回宇都宮エスペール賞。2017年にロシア・サンクトペテルブルクより招聘されての演奏が高く評価され、音楽監督セルゲイ・ロルドゥギン氏に絶賛される。バッハからコンテンポラリーまでレパートリーも広く、2019年東京オペラシティリサイタルシリーズ「B→C」出演。NHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」「リサイタル・ノヴァ」「リサイタル・パッシオ」多数出演。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラ、ローマトレオーケストラ、サンクトペテルブルク国立アカデミーオーケストラ等と共演。現在はソロ、オーケストラ共演に加え、荒川文吉氏(Ob.)、齋藤志野氏(Fl.)との「Trio Explosion」を始め、室内楽やアンサンブルピアニストとしても活躍している。芹沢直美、秦はるひ、江口玲、ファルヴァイ・シャーンドル各氏に師事。
 1st CD「sailing day」に続く2019年2nd CD「展覧会の絵」は《レコード芸術特選盤》に選定される。(公社)日本演奏連盟会員。東京藝術大学ピアノ科、甲斐清和高校音楽科非常勤講師。CJM神宮の杜音楽院講師。https://www.kokikuroiwa.com