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イメージの刷新!~クラシックサクソフォンの魅力~

イメージの刷新!~クラシックサクソフォンの魅力~

今年はドビュッシーの没後100年にあたる年で、今日のコンサートは彼の作品を柱に、フランスの作曲家の音楽が集められました。

 

一曲目は、ドビュッシー作曲の「夢」。

サックスといえば、現代的な強い音の楽器という印象がありますが、山川さんの柔らかな音色にハッと驚かされました。
ピアノの空気と溶け合う優しいサックスの音色は、まさに夢のよう。山川さんのMCによると、サックスはフランスに近いベルギーのディナンで1846年頃に考案され、その後フランスに渡り、ビゼーやドビュッシーなどによって初めて曲が作られたそうです。

サックスはジャズのイメージが強いですが、最初に使われたのはクラシック、フランス音楽だったのですね。

山川さんは穏やかな語り口で「本日はクラシックのサックスというものを楽しんでいただけたら」と、彼女自身のサックスの音色に似た、癒しの声で話してくださいました。

 続くラヴェルの「クープランの墓」は、ラヴェル最後のピアノ独奏曲で、彼の集大成とも言われる名曲です。本日は、管弦楽団版と同じ4楽章構成で「Ⅰ.プレリュード」「Ⅲ.フォルラーヌ」「Ⅴ.メヌエット」「Ⅳ.リゴドン」が演奏されました。

この原曲はピアノの独奏曲ですが、ピアノの旋律をサックスが拾い上げ、音域によってさまざまに表情が変わる楽器の特性が浮き彫りになりました。

 

前半のシメはサックスのためのオリジナル曲、H.トマジによる「オーケストラとサクソフォンの為のバラード」でした。

この曲はトマジの妻スザンヌ・マラールの詩(イギリスの道化師の物語)に合わせて書かれました。英国の夕焼けを思わせる、雰囲気たっぷりのピアノから始まり、サックスが情感豊かに歌います。中間部はイギリス民俗舞曲ジグのリズムが使われ、私たちがイメージするところのサックスらしい溌溂としたノリで、お客さまを楽しませてくださいました。

 

後半は再びドビュッシー。無伴奏のフルート作品「シランクス」を、緊張感あふれる響きで演奏されました。1913年に書かれたとは思えないほど前衛的な響きで、しかもこの作曲者がドビュッシーとは驚きました。印象派の淡色のイメージの強いドビュッシーの、斬新な一面を垣間見ることができました。
山川さんは既存のイメージを覆すセンスが秀逸です!

 

続く曲は、ドビュッシーと同じく今年で没後100年となる、フランスの女流作曲家リリー・ブーランジェによる「ノクターン」でした。リリーの作品は、7月のヴァイオリニスト鈴木舞さんとピアニスト渡邊智道さんのコンサートでも取り上げられましたね。今日の選曲は、渡邊さんの提案でヴァイオリン作品をソプラノサックスに編曲したそうです。

原曲のヴァイオリンでは、低音にひそむ陰りや高音の切なさなど、全体的に暗さを感じましたが、ソプラノサックスで演奏されると、高音の甘さが柔らかく広がるのが印象的でした。死への誘惑を内包する甘さとでも言えましょうか、ヴァイオリンとはまた違った表情の陰りを感じられ、リリーの曲が持つイメージの幅が広がりました。

 

次の曲は、山川さんのお気に入りの曲、プラネルの「ロマンティック組曲」より“イタリア風セレナーデ”“クリスマスのお話“”ロバ使いの歌”でした。

この曲は、山川さんが高校生の時に渋谷のヤマハで偶然見つけた楽譜が、最初の出会いだそうです。昨今では耳から曲と出会うことが多いように感じますが、楽譜と出会って音にしていくという、イチから曲と向き合って音楽を育て上げていくことはなんと素敵なのでしょう。温かいシャンソンのような曲調で、この曲たちを大切にする山川さんの想いが生き生きと伝わってきました。

最後の曲は今日のメイン、ドビュッシー唯一のサクソフォンのための作品「アルトサクソフォンと管弦楽のためのラプソディ」でした。ドビュッシーは「この水のような楽器を目立たせるための、完全にふさわしく固有の[音色の]混合を見つけだそうともがいている」と手紙で述べています。彼が「水のよう」と言い表したとおり、この曲のなかでサックスは神秘的な響きをまとっています。手ですくえば指の間からこぼれていくが、たたけば水の感触があり、水音も鳴る…たしかにそこに「在る」のに、つかまえることはできない、そんなとらえどころのない不思議さが演奏で表現されました。ピアノのさらさらとした音の波にサックスが乗り、それぞれの音色の持ち味が際立ちました。

 

アンコールはイザイの「子供の夢」。

ドビュッシーの「夢」で始まり、最後も夢で終わる、幻想に満ちたプログラムでした。

 

<プロフィール>

山川 寛子(やまかわ・ひろこ)Saxophone

昭和音楽大学卒業。第10回ブルクハルト国際音楽コンクール管楽器部門にて審査員賞を受賞。第7回ルーマニア国際音楽コンクールにて奨励賞を受賞、他受賞歴多数。2012年、ルーマニア国立ラジオ局にて公開CD録音を行い、好評を博す。また、ルーマニアのペレシュ城、アルクーシュ城にて演奏会を開催し、その模様は全世界に放映された。その後も2014年11月にルーマニアとトルコでのリサイタル、2015年5月にはロマナ・アメリカン大学(ルーマニア)日本語研修センター10周年記念行事に日本からの招待アーティストとして招かれ、最終日のコンサートで弦楽カルテットとの演奏を行う。2017年1月セカンドアルバム「Classical Melodies」を発売。2018年2月にはルーマニア・ブラショフ フィルハーモニー交響楽団と2曲の協奏曲を共演し、好評を博した。
現在、ソリストとしての活動の他、室内楽、オーケストラへの客演等幅広い演奏活動を展開中。これまでにサクソフォンを大森義基、波多江史朗の各氏に、室内楽を榮村正吾、福本信太郎の各氏に師事。ジャン=イヴ・フルモー、須川展也、各氏のマスタークラスを受講。
公式HP  http://hirokosax.com

 

渡邊 智道(わたなべ・ともみち) Piano

大分県別府市出身。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業、東京芸術大学卒業。
大分にて、ピアノを島岡恵子、中島利恵、塩手美子、木下文葉に、音楽理論を田村陽子に師事。上京後、2016年まで植田克己に師事。
2016年日本音楽コンクール・ピアノ部門で第3位受賞を区切りとし、その後は昔の偉大な巨匠達が体現し、次世代に伝えんとしていた真の芸術としてのピアノ奏法、響の在り方の追求、復活、伝承を求めて活動。ピアノ芸術研究会講師も務める。また、各地で協奏曲客演、独奏、伴奏、室内楽で独自の活動を展開。その他作詩、作曲、文筆、脚本執筆においても活動を展開。
2018/9/9、17時より代官山教会にてNYスタインウェイ「ローズウッド」を使用したリサイタル、公開録音会を開催。