入江一雄の深い洞察と高潔さ、そして研ぎ澄まされたタッチによって、ベートーヴェンの巨作に秘められた精神が蘇る
プロコフィエフ ピアノソナタ全曲演奏会でたぐいまれな集中力、驚くべきテクニック、さらに加えて深い洞察に貫かれたピアニズムを披露した入江一雄が再登場!
入江氏のプロコフィエフ ピアノソナタ全曲演奏会は、プロコフィエフのピアノ音楽の魅力の多様性を余すところなく披露した驚異の名演奏会であった。
この演奏会によって、プロコフィエフのピアノに開眼した方も多いだろう。しかし今回のメインのプログラムはベートーヴェン、しかもハンマークラヴィーア!
入江一雄という音楽家の器量の深さには舌を巻く以外にないが、絶対に聴き逃すわけにはいかない。敬意と感謝を込めて拝聴、体験したい。
入江氏といえば、アンサンブルピアニストとしても引っ張りだこの存在であるが、それは彼の見識の深さや魅力的な音楽作りが、際立って効果的であるからなのだろう。
彼の演奏は、時として異様なまでの緊迫感に溢れることもあるが、決して、端正な安定感を失わず、独特な風格美を伴いながら、よどみなく一気呵成に弾ききるさまは実に気持ち良く、ベートーヴェンの作品には特にマッチしているように感じられる。
長大な作品にとことん向かい合い、揺るぎない魅力の立体構成を示してくれる入江氏が、ベートーヴェンのピアノ作品の真骨頂ともいえるハンマークラヴィーアで、どのような巨像の全貌を見せてくれるのか、胸が高鳴る思いで演奏会に臨みたい。
(美竹清花さろん)
プロフィール
入江 一雄(IRIE Kazuo)Piano
東京藝術大学・同大学院を首席で卒業・修了。2012年9月よりチャイコフスキー記念ロシア国立モスクワ音楽院研究科に在籍し、2016年夏にディプロマを取得し同科を修了。留学中にロームミュージックファンデーション(2012,13年度)・文化庁(2015年度)より助成を受ける。
第77回日本音楽コンクールピアノ部門第1位、第1回コインブラ・ワールド・ピアノ・ミーティング(ポルトガル)第5位入賞他受賞多数。幅広いレパートリーの中でもライフワークであるプロコフィエフのピアノソナタ全曲演奏会を成功させる等のソロ活動に加え、新日本フィル・東京フィル・日本フィルなどの国内主要オーケストラとの共演や、若手演奏家からベテラン奏者まで幅広い音楽家との共演機会も多い。近年では篠崎‘‘まろ’‘史紀氏から絶大な支持を受け、同氏リサイタルや室内楽公演で多くの共演機会に恵まれる。
これまでに植田克己、エリソ・ヴィルサラーゼら著名な音楽家に師事。現在、東京藝術大学・昭和音楽大学にて教鞭をとる。王子ホールレジデンス「ステラ・トリオ」メンバー。