鳥の歌、自然の詩
朝を喜ぶ鳥の声、木々のささやく真昼の憩い、優しく夜をつつむ雨。さりげない日々のなかで、そっと心に集めたくなる幸せのかけらがあります。音は幸せを運ぶ。
オリヴィエ・メシアンの音楽に触れてから、世のなかにはもっと美しい音が溢れているのだと気がつきました。多くの書物や文化人が、幸せを増し、かなしみや苦悩をその文化体験のなかで希望にかえてゆくものを「良いもの」と呼んできたことを想えば、メシアンの音体験もまた、そのひとつと言えます。
美竹サロンの皆さまと展開している大切なシリーズ『メシアン音楽の神秘』は第4弾を迎えます。ほんとうに感謝、感謝です。第3弾で壮大な浪漫《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》全曲を弾かせていただいてから、その放出量と同じくらい充電が必要でしたが(きっとお聴きくださった皆さまもですね)、不思議なくらい心が熱く満たされたあの時空間は宝物です。そうして次は、美しき色彩のキャンバス《鳥のカタログ》全13曲をどのように伝えてゆくか、ということを想い続けてきました。
-暗がりのなかで自分の小ささにはたと気がついたとき、鳥や自然の歌が等身大の自分を思い出させ、心に安らぎと愛、生きる喜びを与えてくれる-
メシアンのことばのなかでも特に共感したこれは《鳥のカタログ》について語られたものです。孤独の淵に立ちすくんでしまうことのある人間が一歩をふみ出す、その小さな積み重ねを、音のひとつひとつに感じてゆきたいです。
自然の恵みと厳しさ、神と人間-メシアンの紡ぐ世界観が音楽的に説得力をもって心に響くことを願い、《幼子イエス》や《鳥の小スケッチ》などを交え、3回にわけて《鳥のカタログ》にじっくりと向き合ってまいります。今回は、繊細な響きのオアシス「モリヒバリ」や「ニシコウライウグイス」、氷河を舞台にした「キバシガラス」、どこか不気味なリズムの面白い「モリフクロウ」に、空と海を和声的な色彩と構成美で光らせた大作「カオグロヒタキ」を。お散歩に行くような気持ちで、この音風景に浸っていただけたら嬉しいです。メシアンの音のなかに、皆さまそれぞれの幸せのかけらを見つけにきてください。
(深貝 理紗子)
プロフィール
深貝 理紗子(FUKAGAI Risako)Piano
パリ・エコール・ノルマル音楽院を経てパリ・スコラ・カントルム音楽院を審査員満場一致の最高評価を得て首席修了。
2022年ティートックレコーズよりメジャーデビュー、CD『Parfum』を全国リリース(芸術現代社『音楽現代』推薦盤、音楽之友社『stereo』特選盤)。
下野竜也氏、川瀬賢太郎氏等の指揮のもと東京交響楽団等と共演、東京文化会館主催公演等出演多数。
これまでに横山幸雄、オリヴィエ・ギャルドン、島田彩乃、大西真由子の各氏に師事。
2023年に柴田南雄音楽評論賞を受賞後、音楽評論家として朝日新聞にて公演評を執筆中。連載「フランス音楽を纏う」ほか。
現在、演奏・執筆活動の傍ら、主宰音楽教室、インターナショナル音楽教室等にて後進の指導を行う。
公式HP:
https://risakofukagai-official.jimdofree.com/
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