2016年10月30日。第85回日本音楽コンクールピアノ部門本選会での衝撃!
日本音楽コンクールは、日本における権威と伝統のある音楽コンクールの最高峰の一つといわれています。第1回が1932年、なんと戦前からのスタート。歴史的に見てもとても由緒あるコンクールだということがわかります。過去の入賞者には、1965年第7回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞、併せて最年少者賞受賞を果たし、日本のクラシック音楽業界において大きな功績を残した故・中村紘子をはじめ、江戸京子、仲道郁代など、日本で活躍する名だたる音楽家の方々がずらり!まさに若手音楽家にとって、音楽家人生の登竜門となる一ページともいえるでしょう。それだけに、約200人のなかから勝ち抜き、本選に残ったハイレベルなコンテスタントに毎回、注目が集まります。
昨年、第85回 日本音楽コンクールピアノ部門でも、新たな若い音楽家たちのドラマが生まれ、わたしたち聴衆はその感動の瞬間に立ち会いました。
今回のこけら落とし【第十五夜】は、そんな昨年の日本音楽コンクールで見事に第1位を獲得した樋口一朗さんと、入選の守永由香さんが登場!
昨年のオペラシティ本選会での感動が今も鮮明によみがえります。最初に演奏したのが守永さんで、曲はシューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54。コンクールという緊張感あふれる場所で、しかもトップバッターです。聴衆も心臓の音が聞こえそうなほどの緊張感のなか、演奏が始まりました。
すると、どこか物思いにふけるメロディーが印象的に心に響き、聴衆はみるみる彼女の表現するシューマンの世界へと誘い込まれていったのです!
「ああ、そうか。この作品は精神の病に苦しむ頃に作られた作品だった…」そんなことが頭に過ぎりました。守永さんのピアノの特徴は "豊潤な歌で魅了する旋律" とでもいうのでしょうか、たっぷりと歌い上げるのがとても魅力的なピアニストだと感じます。
そんな守永さんの演奏が終え、はじめからコンクールのレベルの高さを感じ、緊張から解き放たれたように会場いっぱいに割れんばかりの拍手が溢れました!
樋口さんが演奏したのは最後でした。ステージに出てきたときには「こんなに小柄で笑顔が素敵な男の子がラフマニノフ?!」と正直思いましたが、演奏が始まると、そんな印象を持っていたことすら忘れてしまいました。曲はラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30。高度な技巧と、華やかな曲想には豊かな表現力が必要とされ、ピアノ協奏曲ではもっとも演奏が難しいといわれる有名な作品です。しかし、樋口さんの冒頭のノスタルジックな旋律に一気に心を奪われました。"色彩の細やかなグラデーション" とでもいうのでしょうか、とても上品な表現力が最後まで魅力的な演奏でした。終演後はブラボーの嵐!
そして今回、そんな昨年の日本音楽コンクールで感動的な活躍をされた今を輝くエネルギー溢れる若手音楽家たちによる贅沢なジョイントコンサートに注目が集まります。
樋口さんも守永さんも現在、桐朋学園大学音楽部にて学ぶ大学3年生ですが、今回のコンサートの企画やプログラムは、実際に美竹清花さろんのピアノを試弾し、イメージを膨らませ、彼らが意図して考えた内容です。
「弾き手によって変わるピアノの音色の違い、おもしろさを発見できるようなコンサートにしたい」 ―― そんな熱い想いを今回のジョイントコンサートというかたちに実現し、プログラムも実におもしろい内容となっています。
コンクールでは見られなかった彼らの "迫真の生演奏での魅力" に期待が高まります。
プロフィール
樋口一朗
1996年福岡に生まれる。桐朋学園大学3年在学中。
第24回九州山口ジュニアコンクール中学の部 最優秀賞 グランプリ受賞。
第8回熊谷ひばりピアノコンクール金賞 併せて 埼玉県知事賞受賞。
第35回飯塚新人音楽コンクール第1位 併せて 文部科学大臣賞、朝日新聞社賞、飯塚市長賞、飯塚文化連盟賞を受賞。
第85回日本音楽コンクール第1位併せて、野村賞、井口賞、河合賞、E・ナカミチ賞、アルゲリッチ財団賞を受賞 。
九州交響楽団、東京シティフィル交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、セントラル愛知交響楽団と共演。
銀座YAMAHAやKAWAI「パウゼ」 ベーゼンドルファー東京、また第19回別府アルゲリッチ音楽祭2017にてソロリサイタルをする。
第13回茨城国際音楽アカデミーinかさまにてかさま音楽賞受賞。
NHK-FM『リサイタル・ノヴァ』に出演。
青柳晋、K.シチェルバコフ、V.オフチニコフ、A.ピサレフ、M.ヴォスクレセンスキー、P.ドゥバイヨン、B.リグット、ジャン=クロード・ペヌティエ、E.ヴィルサラーゼの各氏のレッスンを受講。
これまでに川口由美子、中村順子の各氏、現在岡本美智子氏に師事
守永由香
3歳よりピアノを始。桐朋女子高等学校音楽科を3年在学中。
第22回日本クラシック音3位。第67回全日本学生音楽コンクール高校の部東京大会第2位。第15回ショパン国際ピアノコンクールinアジア高校生部門アジア大会銅賞。第7回桐朋ピアノコンペティション第2位。第85回日本音楽コンクール入選。
第10.11.12.13回茨城国際音楽アカデミーinかさまにかさま音楽賞
受賞。桐朋学園高校Students'concert、高校卒業演奏会、大学Students'concert、室内楽演奏会、桐朋ピアノノガラコンサート、銀座山野楽器音大フェスティバル、現役音大生によってサロンコンサート。
P.ドゥヴァイヨン、M。ヴォスクレンスキ、J・C.ぺヌティエ、C。エルトン、V。トロップ、B。ペトルシャンス ー、B。リグット、J。ロイシュナー、C・M・カン、各氏のレッスンを。
2017年度公益財団法人青山財団。
これまでに杉本安、草冬香の各氏に師。現在、岡本美智子氏に師事。