プロコフィエフに寄せて
私にとってプロコフィエフは、数多くの素晴らしい作曲家の中でも群を抜いて好きな存在です。
彼の作品に初めて出会った時からその魅力に惹かれ、以降熱が冷めることはありません。交響曲・室内楽曲やヴァイオリン・チェロの為の協奏曲など、好きな作品を挙げればキリがありませんが、その中でもやはりピアノ作品が素晴らしいと感じています。
プロコフィエフの音楽というと、「トッカータ」「風刺」や他の作品に多く見られるモーター性・無窮動が真っ先に浮かぶ方も多いと思います。ピアノ作品であれば尚更、楽器の特性上打撃的な要素に耳が行きやすいのですが、ヴァイオリンソナタ第2番やヴァイオリン協奏曲第1番冒頭に見られるような旋律の美しさも大きな要素のひとつで、それを見過ごすことは出来ません。
前述以外にも多彩な音楽性に富み、9曲あるピアノソナタにはそれらが余すところなく凝縮されています。「戦争ソナタ」といわれる第6・7・8番を各回のメインに据え、プロコフィエフの音楽を多角的に楽しんで頂けるようなプログラミングを施しました。聴いて下さる皆様と、新たなプロコフィエフ像を築いていけるならこれ以上の喜びはありません。
プロフィール
入江 一雄(いりえ・かずお)Piano
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て同大学・同大学院を首席で卒業・修了。
第77回日本音楽コンクールピアノ部門第1位、第1回CWPM(ポルトガル)第5位入賞他、受賞多数。ソロ活動だけでなく国内主要オーケストラとの共演や室内楽の演奏機会も多い。近年ではN響コンサートマスター篠崎史紀氏から絶大な支持を受け、同氏リサイタルや室内楽公演で多くの共演機会を得ている。
2012-13年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション・2015年度文化庁(新進芸術家海外研修制度)より助成を受け、チャイコフスキー記念ロシア国立モスクワ音楽院研究科に在籍し、名匠エリソ・ヴィルサラーゼに師事。2016年夏に修了しディプロマ取得。2017年度より東京藝術大学にて教鞭をとる。王子ホールレジデンス「ステラ・トリオ」メンバー。第5回あおによし音楽コンクール奈良にて、ゲスト審査員を務める。