ご夫妻で初登場!ロシアの名門ヴィルサラーゼ門下で培った結晶が、いまここに
僕たちが出会ったのは2014年の2月。それまでベルリンで学んでいた僕は師匠を病で失い、一時帰国を経て、より厳しい環境で勉強したいという思いからモスクワに移りました。その時、幸子はモスクワに留学して既に3年目。共にモスクワ音楽院でエリソ・ヴィルサラーゼ教授の下、研鑽を積みました。
留学当初の僕は今までのキャリアや、下らないプライドのようなものを捨てられず、しかも自分を見失って荒れた演奏をしていた為に先生から相手にされず、他生徒のレッスンをじっと見ながら、特に奏法的に何が足りないのか考えていました。そしてある時自分なりにその答えを見つけたのですが、先生に認めて貰う手段として門下生のコンチェルトの伴奏を弾いてアピールしました。その後、徐々にきちんとしたレッスンが受けられるようになり、勉強に専念し、コンクールにも入賞することができました。
その一方で、幸子も日本からいきなり環境の厳しいモスクワに移ったこともあり、大変苦労したようです。同じように先生から相手にされるまで辛い時間を過ごしたそうですが、その努力が報われ、6つもの国際コンクールで入賞しました。モスクワでの生活は言葉通り「修行・山籠もり」のようなもので、練習・食事・睡眠しかないようなものでしたが、それが良かったのだと思います。幸子はその後徐々にモスクワ市内で演奏する機会を得て、コンチェルトがプログラムに入った時には僕が伴奏を担当しました。特にラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」の共演は楽しかった思い出の一つです。
そのような中、初めて1台のピアノで連弾したのは2016年11月、ロシア・サハリンでの演奏会でした。僕が編曲した「日本の歌メドレー」(いたたまれないので既にお蔵入りにしました)、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」、邦人作品をメインに互いのソロを交えたプログラムでした。以降、連弾の機会は殆ど無く、昨夏にモーツァルトの「4手のためのピアノ・ソナタK.521」の第1楽章を、今夏の演奏会で第1・3楽章を演奏しただけでしたが、今回ようやく全楽章をお披露目できることになりました。併せて、シューベルト作品としては比較的技巧を要する「2つの性格的行進曲D968」も演奏します。また、互いのソロもありますのでお楽しみに!会場で皆さまとお会いできるのを楽しみにしております。
(佐藤 彦大)
プロフィール
佐藤 彦大(さとう・ひろお)Piano
盛岡市出身。東京音楽大学大学院鍵盤楽器研究領域(ピアノ・エクセレンス)修了、ベルリン芸術大学及びチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院において更なる研鑽を積む。2009-12年度ロームミュージックファンデーション、2013・15年度明治安田クオリティオブライフ文化財団奨学生。
2008年第17回国際音楽祭「ヤング・プラハ」にソリストとして出演。2009年広上淳一指揮/東京音楽大学シンフォニーオーケストラのヨーロッパツアー、2012年小泉和裕指揮/仙台フィルハーモニー管弦楽団の東北ニューイヤーコンサートツアーにソリストとして同行。その他、大友直人指揮/東京交響楽団、小林研一郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団、広上淳一指揮/京都市交響楽団、L.ヴィオッティ指揮/ビルバオ交響楽団、V.P.ペレス指揮/テネリフェ交響楽団等、国内外の主要オーケストラと共演。室内楽ではNHK交響楽団首席メンバーをはじめ久保陽子(Vl.)、二村英仁(Vl.)の各氏等と共演している。
主要なリサイタルは2011年東京文化会館小ホール、2013年紀尾井ホール、2016年浜離宮朝日ホールにおいて開催され、各誌で好評を博した。またNHK-FM「名曲リサイタル」「リサイタル・ノヴァ」に出演。日本各地をはじめ、スペイン・ロシア・ドイツ・イタリア・フランス・チェコ・中国・台湾で演奏活動を行っている。
録音ではライヴ・ノーツより2012年「Hiroo Sato plays 3 Sonatas」、2017年「Hiroo Sato Piano Recital」(レコード芸術準特選盤)の2枚のアルバムをリリースしている。
2017年9月より母校、東京音楽大学非常勤講師、岩手大学特命准教授として後進の指導にあたる。
[受賞歴]
2004年第58回全日本学生音楽コンクール高校の部全国大会第1位、併せて野村賞・都築音楽賞受賞
2006年第1回野島稔・よこすかピアノコンクール第1位
2007年第76回日本音楽コンクール第1位、併せて野村賞・井口賞・河合賞受賞
2010年第4回仙台国際音楽コンクール第3位
2011年第5回サン・ニコラ・ディ・バーリ国際ピアノコンクール第1位、併せてF.リスト2011特別賞・批評家賞受賞(イタリア)
2015年第21回リカルド・ビニェス国際ピアノコンクール第2位(スペイン)
2015年第36回霧島国際音楽祭賞受賞
2016年第62回マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽コンクール第1位、併せて聴衆賞・グラナドス賞受賞(スペイン)
佐藤 幸子(さとう・さちこ)Piano
桐朋学園大学、同大学院大学と研究科を経て、モスクワ音楽院の研究科を修了。エリソ・ヴィルサラーゼ女氏に師事。
2012年第14回日本演奏家コンクール第1位、併せてファツィオリ賞。
2015年第16回マリア・ユーディナ国際コンクール第1位(ロシア)
2015年第14回モスクワ国際フェスティバルコンクール第1位(ロシア) 2015年第7回トレヴィーゾ国際ピアノコンクール第2位(イタリア)
2016年第2回スカルラッティ国際ピアノコンクール第3位、併せてスカルラッティのソナタにて最も優れた演奏をした者に贈られる、スカルラッティ賞を受賞(イタリア)
2017年ロンドングランドプライズ ヴィルトゥオーゾ国際音楽コンクール 第2位
2017年マドリード国際音楽コンクール 第1位 (スペイン)他、多数受賞。キルギスにてビシュケク市交響楽団、キルギス国立音楽院交響楽団、イタリアにてバカウ国立ミハイル・ジョラフィルハーモニー交響楽団との共演など、ロシア、イタリアを中心に幅広く演奏活動を行っている。
「Centr vnimaniya」(2016・OTV)、「nash den'」(2016・ASTV)等において演奏活動の様子が放映され、また「Teoria Zagovara」(2016・ロシア国営放送テレビ)では日本文化のコメンテーターとして出演している。