セザール・フランクが35年ぶりに描き上げた室内楽曲。
偶然引き合わされたメンバーによる、ピアノ五重奏曲へ短調の全貌──
美竹サロンの主催公演は、偶然の出会いによって、流動的に決定することがあります。
今回のメンバーは、ピティナの入賞者ガラコンサートで偶然に引き合わされたメンバーによって実現しました。
コンサートのリハーサルで、急遽、サロンをご利用いただいたのですが、そこで繰り広げられたフランクのピアノ五重奏曲が、あまりに叙情的で素晴らしかったものですから、リハーサルにも関わらず、思わず聴き入ってしまいました。
ガラコンサートでは第1楽章のみの演奏でしたが、聴き手も演奏家も「1楽章だけではもったいない!最後までこのフランクの作品を体験したい!」そう思ったことではないでしょうか。そんな両者の思いが一致し、この作品の全貌を明らかにする演奏会が実現となった次第です。
今回、鈴木 舞氏をはじめとする、對馬 哲男氏、中村 翔太郎氏、小畠 幸法氏という本格派演奏家たちが、注目されている16歳の若手ピアニスト、森本 隼太氏と共演します。そんなメンバー構成についても注目すべきではないでしょうか。
アンサンブルは音楽で対話するような面白さがあることから、相互に影響し合うことで、アイディアが生まれ、音楽の可能性が無限に広がります。
森本氏の才能を高く評価する鈴木氏は、彼の表現力の幅広さ、柔軟性に驚き、もっと共演をしたいと語っています。鈴木氏は多彩な音楽的なセンスと表現力を持つ素晴らしいヴァイオリニストですが、共演者から受けるイマジネーションの豊さにも感心させられたそうです。
さらに、今回取り上げられるフランクのピアノ五重奏曲へ短調については、面白い逸話があります。この曲はフランクが約35年ぶりに作曲したとされる室内楽作品であり、初演のピアノを担当したフランクの友人であるサン=サーンスに献呈を試みますが、サン=サーンスは拒否し、楽譜をピアノの上に放り出したままさっさと帰ってしまったそうです。
フランクの持ち味でもある叙情的な美しさ、曖昧さが、どこか悲観的で緊迫した空気で繰り広げられる魅力的な作品ですが、形式美を重視していたサン=サーンスにとっては理解に苦しむ内容だったのかもしれません。
そんな興味深い逸話も残る作品ですが、今回、偶然によって引き合わされたメンバーによって、35年越しに馳せたフランクの心情に、寄り添ってみたいものです。
(美竹清花さろん)
プロフィール
森本 隼太(MORIMOTO Shunta)Piano
2004年生まれ。ピティナ・ピアノコンペティション全国大会において、2018年G級金賞、2020年特級銀賞および聴衆賞。全日本学生音楽コンクールピアノ部門において、2015年第69回小学生の部全国大会第1位、2017年第71回中学生の部全国大会第2位。2018年Aloha International Piano Festivalソロジュニア部門1位、コンチェルト部門優勝。2019年PIANALE International Piano Academy & Competition審査員賞、特別賞KNS Classicalを受賞。2020年Arsonore International Music Festivalに参加。2017年福田靖子Scholarship、2020年AOIDE Scholarshipを取得。現在、関本昌平氏、William Grant Naboré氏に師事。サンタ・チェチーリア音楽院、学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校に在学中。
鈴木 舞(SUZUKI Mai)Violin
東京芸大を経て、ローザンヌとザルツブルグ、ミュンヘン研鑽を積む。チャイコフスキー国際コンクール最年少セミファイナリスト。ヴァーツラフ・フムル国際コンクール、オルフェウス室内楽コンクール優勝。スピヴァコフ国際コンクール第二位。読響、東響、ホーフ響、モラヴィアフィル、クオピオ響、ローザンヌ室内管等、内外のオーケストラと共演を重ね、各地で室内楽やリサイタルに招かれている。
キングレコードよりデビューCD「Mai favorite」をリリース。使用楽器は1683年製ニコロ・アマティ。
Website:
https://maiviolin.com
對馬 哲男(TSUSHIMA Tetsuo)Violin
東京芸術大学音楽学部器楽科卒業後、同大学音楽研究科修士課程修了。三菱地所賞、アカンサス音楽賞受賞。読売新人演奏会、藝大室内楽定期演奏会、JTが育てるアンサンブルシリーズ等に出演。第22回かながわ音楽コンクール最優秀賞、神奈川県知事賞受賞。第60回全日本学生音楽コンクール全国大会第一位。第23回リゾナーレ室内楽セミナー 優秀賞。
現在読売日本交響楽団 次席第1ヴァイオリン奏者。
中村 翔太郎(NAKAMURA Shotaro)Viola
兵庫県三田市出身。
これまでにヴィオラを百武由紀、川﨑和憲の各氏に師事。
第15回コンセール・マロニエ21弦楽器部門第1位、他多数入賞。サント・ヨーロッパ音楽祭にゲスト出演や、ウィーンフィル・ベルリンフィルメンバーと共演するなど国内外で活躍している。大阪フィルハーモニー交響楽団や日本センチュリー交響楽団、ベトナム交響楽団に客演首席奏者として出演。
学内において同声会賞、アカンサス音楽賞、三菱地所賞受賞。
東京ジュニアオーケストラソサエティ講師。
藝大同期による弦楽アンサンブル「TGS」代表。Alto de Campagne(ヴィオラ四重奏)メンバー。
東京藝術大学卒業。現在NHK交響楽団首席代行ヴィオラ奏者。
小畠 幸法(KOBATAKE Yukinori)Cello
NHK交響楽団チェロ奏者。
東京藝術大学音楽学部卒業。同大学院音楽学部修士課程修了。
これまでにチェロを金木博幸、間瀬利雄、苅田雅治、山崎伸子、藤森亮一の各氏に師事。
マスタークラスをW.ヴェッチャー、P.ドゥマンジェ、D.ゲリンガスの各氏に師事。
ソロ室内楽、スタジオレコーディング等幅広く活動中。
ENSEMBLE FOVEメンバー。
ENSEMBLE FOVE公式サイト
https://www.fove.tokyo/