瞠目されている若き俊英がついに登場──
聴衆の心を摑んで離さない凄まじい表現力に、驚愕
昨年のPTNA2020特級ファイナルでのこと、まだあどけなさが残る一人の少年に目が止まった。
「天才少年が PTNA に登場する!」と森本隼太氏の噂を小耳に挟み、実際の演奏を聴くため、コロナ禍のコンクールに足を運んだ。
若き才能の発掘を大切にしてきた当サロンにとっては、大変興味深かった。
だが実態は、そうした噂をはるかに凌駕するものであった。
ラフマニノフ、ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30。
これほど聴き古された名曲にも関わらず、いままで気付かなかった独特の風格美が引き出されている。
彼自身の初心の感動と、作品への共感と敬意が込められ、聴き手の心に深く伝わってくる。それを聴いた聴き手は、体温の上昇を抑えられなかったはずだ。
核心に迫る強弱やテンポの設定に、指揮者をも、オーケストラをも、この少年が先導しているかの錯覚を覚えるほどの箇所もあった。
それにしても、あれほどの演奏を17才の少年がなぜ実現できるのだろうか!
まさに、年齢を超越した驚くべき表現力・・・。
拍手喝采のステージでお辞儀するその少年は、どこか肝が据わった、どっしりとした骨太な雰囲気、これにも驚いた。
彼の存在感はあまりにも圧倒的で、案の定、聴衆賞を受賞した。
森本隼太というピアニストは、音楽を通して、人物としても、今後ますます気になる存在になることは間違いないだろう。
(美竹清花さろん)
プロフィール
森本 隼太(MORIMOTO Shunta)Piano
2004年生まれ。ピティナ・ピアノコンペティション全国大会において、2018年G級金賞、2020年特級銀賞および聴衆賞。2017年第8回福田靖子賞選考会第1位、福田靖子賞受賞。全日本学生音楽コンクールピアノ部門において、2015年第69回小学生の部全国大会第1位、2017年第71回中学生の部全国大会第2位。2018年Aloha International Piano Festivalソロジュニア部門1位、コンチェルト部門優勝。2019年PIANALE International Piano Academy & Competition審査員賞、特別賞KNS Classicalを受賞。2020年Arsonore International Music Festivalに参加。2020年AOIDE Scholarshipを取得。現在、関本昌平氏、William Grant Naboré氏に師事。学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校に在学。