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入川 舜 バッハを辿るVol.3
〜ポリフォニーとホモフォニー〜
バッハが書いた独立した珠玉の鍵盤楽曲と、バッハ以後の作曲家たちによる、「音楽の父」への憧憬
バッハの鍵盤作品はその多くが「連作」となっていて、平均律クラヴィーア曲集でも組曲でも、あるテーマに沿ったいくつもの作品が、ひとかたまりとなって全体を構成するものが多い。一方単独で書かれた作品もあり、それらはロマン派の時代からバッハの音楽の中では例外的なヒットナンバーだった。豊かさに満ちているが、ある種の謙虚さを持つバッハの鍵盤楽曲の中で、これらは「演奏会映え」する表出力を持っている。イタリア協奏曲や半音階的幻想曲は、鍵盤楽器の特性を活かした方法で作曲されているが、その方法は、バッハ以後の作曲家たちによって花開く新しい音楽――ホモフォニー(単声)音楽に通じるものがある。バッハは、ポリフォニー(多声)音楽の作曲家だったから、この音楽の興隆にはいくぶん戸惑いながら、それでもそのスタイルを自分の中に取り入れようと努力をしていた。それでは、ポリフォニー音楽は廃れたのだろうか?いや、むしろ逆なのではないか。モー ツァルトがバッハの音楽に出逢い、その研究から大いに得るところがあったのはよく知られているし、メンデルスゾーンの残した変奏曲にも、バッハの音楽へのオマージュが感じられる。ホモフォニー全盛期でも、ポリフォニーの精神は音楽家たちの中で脈々と受け継がれていた。ふたつのフィールドで行われた作曲家たちの交流は、バッハを辿る上で重要な参照点といえるだろう。
(入川 舜)
プロフィール
入川 舜(IRIKAWA Shun)Piano
静岡市出身。東京芸術大学音楽学部ピアノ科卒業、同大学院研究科修了。文化庁海外派遣研修員として、パリ市立地方音楽院とパリ国立高等音楽院修士課程でピアノ伴奏を学ぶ。
高瀬健一郎、寺嶋陸也、辛島輝治、迫昭嘉、A・ジャコブ、J−F・ヌーブルジェの各氏に師事。
パリ・シャトレ座はじめフランス各地やスイスで演奏するほか、オーケストラとの共演、室内楽、コンクールや講習会での演奏、録音など、活発な活動を行っている。
「静岡の名手たち」オーディションに合格。神戸新聞松方ホール音楽賞、青山バロックザール賞(依田真宣(Vn)、内田佳宏(Vc)両氏とのピアノトリオとして)を受賞。
日本人作曲家の作品を蘇らせたCD「日本のピアノ・ソナタ選」をミッテンヴァルト社より発売、文化庁芸術祭参加作品となる。
2011年デビューリサイタルを開催。以後も、2015年のドビュッシーのエチュード全曲など意欲的なプログラムでリサイタルを行う。
南フランス、サン=ジャン・ド・リュズで行われているラヴェルアカデミーでは、歌曲クラスのピアノ伴奏助手を務める。 またフランス各地での講習会(ナンシー、ヴァンセンヌ、ニー スなど)では器楽の様々なクラスの伴奏員を務める。
2016−2017年はパリ市立地方音楽院でピアノ講師と伴奏員を務めた。
現在、オペラシアターこんにゃく座のピアニスト、東京藝術大学非常勤講師を務める。
東京・渋谷の美竹清花さろんにて「バッハを辿る」ピアノコンサートシリーズを継続中。
公式ホームページ:
http://shunirikawa.work/shun.html