美しくも力強く、叙情的──
大好評!鈴木舞&尾崎未空による北欧の巨匠シリーズ─最終章─
クラシック音楽は、国や時代、精神性によってさまざまな表情を見せる。
しかし、“北欧の音楽”に出会う機会は、決して多くはない。
北欧の作曲家といえば、
ノルウェーのグリーグ(1843–1907)、
フィンランドのシベリウス(1865–1957)
という二大巨匠はまず外せないだろう。
その音楽には、自然の厳しさと静けさの中で育まれた、独自の民族性や郷土愛が力強く息づいている。
一見控えめで朴訥とすら感じられるその音には、耳を澄ませると確かな熱や息づかいが宿っていることに気づかされる。
今回メインで取り上げるグリーグの《ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調》は、劇的な緊張感と深い祈りを思わせる静寂が交差する、北欧ロマン派の傑作である。
静けさの中に燃えるような情熱──それこそがこの作品の本質だろうと思わせるほど、聴き終えたあとには胸が熱くなる。
シベリウスの《5つの小品 Op.81》、そして《樹木の組曲》より《モミの木》では、壮大な交響曲とは異なる、親密で詩情に満ちた世界が広がる。
短い曲の中に、北欧の森を歩くときのような静寂と、凍てつく空気の透明感が息づいている。
さらに、現代フィンランドを代表するラウタヴァーラ(1928–2016)の《ノクターンとダンス》をセレクトするあたりは、現代作品が得意なこのデュオならではだろう。
夜の気配を纏うノクターンと、神秘的な躍動のダンス。
北欧音楽の精神が、時代を超えてどのように受け継がれてきたのかを辿ることができる。
この対比は、北欧音楽の本質に触れる貴重な体験となるはずだ。
留学先ミュンヘンで研鑽し合った鈴木舞氏と尾崎未空氏。
どんな作品にも既成観念に縛られず真摯に向き合い、全身全霊で音楽を届けようとする姿勢には、毎回圧倒される。
本シリーズが3回目を迎えるのは、多くの人がこの音楽を求めている証だろう。
“北欧の美しく、力強く、そして静けさに秘めたロマンと叙情性”。
その核心へ──ふたりの音楽が、いよいよ深く踏み込む。
最終章にふさわしい、特別な一夜となるだろう。
(渋谷美竹サロン)