かのラルス・フォークト氏の愛弟子
8歳でオーケストラ・デビューしたドイツの才女!
5歳でピアノを始め、5歳のうちにハンブルクの国際スタインウェイ・コンクールで最年少の参加者として受賞、8歳でオーケストラ・デビュー、国際グロトリアン=シュタインヴェーク・コンクールでは6年連続で1等賞を受賞するなど、神童として注目を浴びてきたドイツのピアニスト、キヴェリ・デュルケン──これだけでも稀有の才能の持ち主であることがわかる。
さらに、ヴァイオリニストのクリスティアン・テツラフ氏とは定期的に共演している室内楽パートナーとして、熱い信頼を得ている。テツラフ氏はN響を始め、国内の数々のオーケストラとも共演を果たし、近年日本の聴衆からも人気を集める注目の存在となっているが、彼の収録しているブラームスのヴァイオリンソナタ(全曲)では、かのブラームスの権威として知られているピアニストのラルス・フォークト氏と共演しており、今回出演されるデュルケン氏はラルス・フォークト氏の愛弟子という繋がりだ。彼らのアルバムは名盤として知られ、何度も聴いても込み上げるものがある。
しかし、昨年51歳という若さで急逝したラルス・フォークトは、ピアニストとしても指揮者としても世界で注目を集め、日本でも急激に注目され始めていただけに残念である。それだけに、今回の愛弟子であるキヴェリ・デュルケンの出演に関してはラルス・フォークトにも感謝の祈りを捧げたい。
今回のプログラムは、彼女のアルバムにも収録されているスークのピアノ曲集「人生と夢」Op.30。
そしてロマン派の傑作、ショパンのバラード第1番 ト短調 Op.23。
精神性の高いベートーヴェン、ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111。
プログラムも彼女の個性が反映されつつも、日本の聴衆を歓迎するような聴き応えたっぷりな傑作のセレクトに人柄が現れているようだ。
今回のデュルケン氏の登場により“音楽に国境はない”ことが痛感されるだろう。しかしながら、日本人的などこか几帳面な演奏とワールドクラスの逸材の演奏には確かに“違い”があることも実感できるのではないか。
さまざまな制約はあるものの、海外演奏家の本物の生演奏をサロンで体験できる機会も増やしていきたいと願っている次第である。
(渋谷美竹サロン)
プロフィール
キヴェリ・デュルケン(Kiveli Doerken)Piano
8歳でオーケストラ・デビューし、カメラータ・ハンブルク、カメラータ・ベルン、アテネ国立管などと共演。2018/19年シーズンには、ドイツ・カンマーフィル(デ・ラ・パーラ指揮)にデビュー、フランク「交響的変奏曲」を演奏した。
キッシンジャー・ゾンマー音楽祭、シュヴェツィンゲン音楽祭、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭など、多くの著名な音楽祭に定期的に招かれている。
2007年にはダライ・ラマのために、09年にはドイツのメルケル首相のためにワシントンD.C.で演奏した。
室内楽にも積極的で、テツラフ兄妹、S.カム、M.ホルヌングらのアーティストと定期的に共演。妹のダナエ・デュルケンと、5歳からピアノ・デュオを組んでいる。
録音では、ARSレーベルからヨゼフ・スークのソロと室内楽作品を収録したデビューCDをリリース。
2015年にギリシャのレスボス島でモリヴォス国際音楽祭(MIMF)を設立し、芸術監督を務めている。ギリシャの財政難と難民危機の中、MIMFはこの島にクラシック音楽の伝統をもたらすだけでなく、地域全体の希望のシンボルとなっている。
TONAListenメンバー。
カール・ハインツ・ケマーリングとラルス・フォークトの各氏に師事し、ハノーファー音楽演劇大学を卒業。