“ミッチーワールドの魅力”を探訪してみませんか
渡邊智道の第三弾です。ある方が、「渡邊智道さんは、美竹清花さろんのイチオシのピアニスト」と言われました。なにをもってイチオシと言われるのか、よくわかりませんが、わたしたちにとって、美竹清花さろんに登場するピアニストは、すべてイチオシの方ばかりです。
たしかに渡邊さんは今回が3回目の登場であり、回数でいえばもっとも多くなります。聴き手であるお客様の評判なども当然、考慮していますが、渡邊さんの魅力は、なんと言っても、独得な、やわらかくやさしい音、そしてその音が紡ぎ出す独自な音楽性にあるといってもよいと思います。テンポもその温かい音に寄り添うように素直に、自然に従い、決して最後まで出すぎたり、みだすようなことはしません。ある意味、決してドラマティック過ぎたりはせず、物足りなさすら感じさせながら、極上の余韻を残して演奏を終えてしまう、それがミッチー風なのだと思われます。ですから、一度、ミッチーの独自なピアノ演奏の魅力にとりつかれると、たまらなくあれこれ聴いてみたくなってしまいます。何を弾いてもミッチー風であり、そこにミッチーの譜読みのおもしろさ、決して奇を衒っているわけではなく、大部分はオーソドックスですらあるのですが、やはり魅力的なミッチー風が刻印されている演奏をわたしたちは楽しむことができ、それがユニークな他には変えられない魅力となっています。そのミッチーが、今回はさらにさらにミッチーワールドの内奥へと皆様をご案内することになるはずです。
今回のプログラムも実にミッチーらしいこだわりを感じますが、思わず「おおぉーッ」と言いたくなるような彼らしい編成で、予定どおりであれば、ドビュッシー(ヒースの茂る荒地、花火)、ドヴォルザーク(ユモレスク)、ベートーヴェン(月光)、シューマン(4つのフーガ、最後の幻影による変奏曲)を聴くことができます。ですが、当日の変更も多いミッチーです。ポゴレリッチのように楽譜を見ながら弾きます。しかし、そうではあっても決して期待を裏切るようなことはなく、ライブの魅力をいっそうかき立ててくれます。それがミッチーであり、ミッチーワールドなのでしょう。
(渡辺公夫)