”ミッチーワールド”のショパンを堪能
実は、渡邊智道さんは、“ミッチー”という呼称を、(正式には…笑)嫌がっています。
そこで、ミッチーの代わりになる愛称を検討したのですが、現在まで思いついていませんので、当面はミッチーで行こうと思います。
なぜ、“ミッチー”などという愛称、またはレッテルが必要になるのかというと、皆様もすでにご理解されていると思いますが、彼の演奏の特色、魅力にあります。
といっても、渡邊さん自身はオーソドックスな演奏(特にリズム、テンポ)をしているつもりです。(笑)
渡邊さんの演奏の特色は、なんといっても“音色と響き”そして演目に対する慈しみから生じる“曲づくり”―― 単純な“構成”ではなく、もっと総合的なもの ―― にあるといえます。
これが渡邊さんという人柄、人間性と切っても切り離せない関係にあるからです。
誤解を恐れずに言えば、ある意味で、渡邊さんはまだ20代半ばですが、その演奏スタイルは“出来上がっている”ともいえなくもない一面があります。
おそらく、これはわたしの推測ですが、渡邊さんにとっては、コンクールなどはまったくどうでもいい存在なのだと思います。
ですから、ほとんどコンクールには関心がないだけでなく、入賞しようという意欲よりは、自分の演奏が果たしてどのように認められるのかそうでないのか、そうした興味から出場したのだと思われます。
実際、コンクールでも、決してコンクール向けではない彼の演奏の評価は、審査員によって二分されることが多いようです。
おそらく、ほとんどの演奏家さんもそうなのだと思います。
グレン・グールドのように、コンクールには一度も出場したことがないという著名な演奏家も多いですし、コンクールで輝かしい成果を収めても、それがゴールになってしまっているケースすらあります。
「たかがコンクール、されどコンクール」です。
さてそんなミッチーですが、今回もたっぷりと魅力的なミッチーワールドが待ち受けています。
ミッチーの美竹清花さろんでのコンサートは4回目になりますが、私の個人的な印象として強く残っているのは、バッハ・イギリス組曲、主よ人の望みの喜びを、ベートーヴェン・月光、シューベルト・さすらい人、ファンタジー、ヤナーチェク、ショパン(バラ2)…等々です。
多くの渡邊智道さんのファンにとっては、「ミッチーだったらこの曲をどんな風に弾くだろう!」というのが、コンサートに参加する最大の関心事なのだと思います。わたしもそうです。
今回のプログラムをご覧ください! 渡邊智道というピアニストに関心のある方にとっては、たまらなく魅力のあるプログラムとなっています。ショパンを堪能することができ、ドビュッシー、スクリャービン、ラヴェル、プーランクもそえられてられています。
(渡辺公夫)
プロフィール
渡邊 智道
大分県別府市出身。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業、
東京芸術大学卒業。
ピアニスト、作曲家。
2009年フッペル鳥栖ピアノコンクール第1位、
並びに月光賞を受賞。
2016年日本音楽コンクールのピアノ部門で第3位を受賞。