太田糸音、挑む── ショパンのエチュードOp.10全曲演奏!
さろんでの対話。そこには作品と奏者とお客さまの中に、まるで演奏している瞬間にのみ見られる花笑みに趣を感じるような、暖かい結びつきがありました。
バッハのイギリス組曲第2番と、ショパンの12の練習曲(作品10)を軸に置いたプログラムをお届け致します。紅葉月、秋の美竹清花さろんにて、皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げます。
(太田 糸音)
「それぞれの作品から感じる、圧倒的な質量や熱量のような意志をより強く、より深く、曲の魔力に触れているような感覚から、演奏するたびに私自身の中での少しの変化を感じ、とても新鮮な喜びを感じています。」
そう語るのは2000年生まれの19才、ピアニスト太田糸音。
多彩な魅力が詰まった彼女のピアノは、毎回表情を変え、これからの行方が楽しみな若手演奏家の一人だ。
そんな彼女の演奏は女性らしさも男性らしさも兼ね揃えているというべきか、彼女のピアノを聴いていると単なるピアノの音ではなく、時折声楽的に、それもソプラノの女性のきらびやかな美声であったり、バリトンの男性ような重く低く腹の底に響くような声で聴こえてきたり、その引き出しは未知数だ。
その作品を照らすために必要な演技力、歌唱力を彼女自身が潜在的に持ち合わせているような、そんな大型の才能を感じられる。
そして、今回のプログラムの注目はなんと言っても、ショパンのエチュードOp.10の全曲演奏!
全12曲からなるショパンのエチュードOp.10は技術的にも音楽的にも一曲一曲の難易度が非常に高いといわれており、一曲のみを取り上げて演奏されるのが一般的だ。
しかし、今回は12曲全てで1つの組曲が完成されるといったショパンの遺志を受け継ぐようなかたちで1度に全曲を演奏する選択をした。
こうしたチャレンジ精神は若さゆえではなく、彼女の「まっすぐさ」によるものだろう。
自分とまっすぐに向き合い、作品とまっすぐに向き合う、これが太田糸音のスタイルなのである。
そんな心の生の音がダイレクトに聴衆のもとへ届くような彼女の「まっすぐさ」に、今回も聴衆は感動させられることだろう。
(美竹清花さろん)
プロフィール
太田 糸音(Shion Ota)Piano
2000年生まれ。2017年東京音楽大学付属高等学校を2年次で早期修了し、飛び級にて現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンス3年、特別特待奨学生として在学中。2013年第67回全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位併せて野村賞、井口愛子賞、福田靖子賞、音楽奨励賞を受賞。第17回浜松国際ピアノアカデミーコンクール第5位、モスト・ プロミシング・アーティスト受賞。2007年より10年連続でピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会において入賞し、2016年には特級銀賞、聴衆賞を受賞。2017年第21回松方ホール音楽賞第1位受賞。NHK Eテレアニメ「クラシカロイド」作中原曲演奏を担当。2018年マルタ国際ピアノコンクール第2位。CHANEL Pygmalion Days 参加アーティスト。
2013年より大阪、京都、東京、横浜、水戸、名古屋、チェンマイ(タイ)等各地でリサイタル・コンサートに多数出演。これまでに大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、東京交響楽団、日本フィルハーモニー管弦楽団等と共演。 2011年より6年連続で大阪府高石市教育委員会より表彰される。2013年~2015年度ヤマハ音楽振興会音楽奨学支援奨学生、2017年度公益財団法人青山音楽財団奨学生。現在、石井克典、江澤聖子、武田真理、半澤佑果の各氏に師事。