葵トリオ――この完璧無比なるピアノトリオは日本の宝といってよい。
本年6月に予定されていたサントリーホール主催のベートーヴェン ピアノ三重奏全曲演奏会を待ち望んでいたファンは多かったはずだ。
わたしたちもそうだった。しかし、あろうことか、コロナ禍により中止となってしまった。
コロナで最も残念だったのが、この葵トリオの演奏が聴けなかったことだ。
葵トリオの演奏に初めて接したのは結成直後のことだったと思うが、奇跡ともいえるほどのアンサンブルの美しさに、今時こんなピアノ三重奏があるのかと、しかも今、目の前で演奏が繰り広げられていると、思わず我が耳を疑ってしまったほどだ。
その後、その奇跡のアンサンブルの凄さは、世界に向かって証明された。第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で日本人として初めて優勝するなど、数々の偉業を短期間のうちに成し遂げてしまった。
葵トリオはレパートリーが広く、多彩であるだけでなく、近年そのレパートリーに深みを増しているように感じる。
今回はサントリーホールのベートーヴェン・シリーズを聴けなかったわたしたちのために、ベートーヴェンを凝縮させたオール・ベートーヴェンとなっている。実にありがたいことだ。また、葵トリオの奇跡のアンサンブルに接することができる。あのピアノの和音の美しさ、音楽心に満ちたなんとも温かいヴァイオリン、深く自由自在なすべてを包み込むチェロ、そして三位一体のトリオとして、一つとなってどこまでも突き進んでいく輝かしく栄光に満ちた音楽 ―― ヤバイッ!…もう今から鳥肌が立ちそうになっている。
(美竹清花さろん)
プロフィール
ピアノ三重奏 葵トリオ(Aoi Trio)piano trio
ピアノ:秋元 孝介 Kosuke Akimoto, piano
ヴァイオリン:小川 響子 Kyoko Ogawa, violin
チェロ:伊東 裕 Yu Ito, cello
「『とても高い個々の技術を備えた3人の素晴らしい奏者』、そして『ピアノ三重奏としてのサウンドと精神』。優れたピアノ三重奏を形成するこの2つの要素が、完璧なバランスでした。」
-ヴァンサン・コック(トリオ・ヴァンダラー, ピアニスト)<音楽の友>-
「幅広いレパートリーで、類まれなほど多才であり、優れた洞察力を伴った演奏を披露。」
-<The Strad>-
「若く秀逸な葵トリオが幅広い音楽を披露。エネルギーに満ちた技巧的な演奏で、ヨーロッパからアジアにわたる、古典から現代作品までを展開。」
-<Deutchlandfunk>-
第67回ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で、日本人団体として初の優勝を受賞した、現在最も注目を集めるピアノ三重奏団。
東京藝術大学、サントリーホール室内楽アカデミーで出会い、2016年に結成。「葵/AOI」は、3人の名字の頭文字をとり、花言葉の「大望、豊かな実り」に共感して名付けた。
好評を博したサントリーホールでのコンクール優勝記念公演に続き、これまでにトッパンホール、紀尾井ホール、フィリアホール、びわ湖ホール、宗次ホール、ふきのとうホール、兵庫県立芸術文化センター、アトリオン秋田、アクトシティ浜松、ミュンヘン、バイロイト、バーデン=バーデン、ケルン、ヒッツァッカーフェスティバルなどに出演。
今シーズンはあいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール、びわ湖ホール、宗次ホール、レーゲンスブルク、ハンブルク、その他イタリアやフランスなどヨーロッパ各地で出演予定。また2021年には札幌交響楽団とベートーヴェンの三重協奏曲の共演が予定されている。
マイスター・ミュージックから「ハイドン27番&シューベルト2番」と「ベートーヴェン1番&メンデルスゾーン2番」の2枚のCDをリリースしており、両ディスクともレコード芸術誌で特選盤に選ばれて好評を得ている。
第28回青山音楽賞バロックザール賞、第29回新日鉄住金音楽賞フレッシュアーティスト賞(新日鉄住金音楽賞は2019年4月より日本製鉄音楽賞に改称)受賞。
これまでに伊藤恵、中木健二、花田和加子、原田幸一郎、堀正文、松原勝也、山崎伸子に学ぶ。現在は拠点をドイツに移し、トリオ・ヴァンダラーのV. コックに学ぶほか、ミュンヘン音楽・演劇大学でフォーレ四重奏団のD. モメルツに師事しながら国内外で活動している。
公式ホームページ:
http://aoitrio.com/
秋元 孝介(ピアノ) Kosuke Akimoto,piano
兵庫県西宮市出身。兵庫県立西宮高等学校音楽科を経て、東京藝術大学、同大学院修士課程修了。学内にて安宅賞、アカンサス音楽賞、大賀典雄賞、三菱地所賞、クロイツァー賞、平山郁夫文化芸術賞などを受賞。これまでに第2回ロザリオ・マルシアーノ国際ピアノコンクール第2位、第10回パデレフスキ国際ピアノコンクール特別賞などを受賞。日本とヨーロッパ各地でソロリサイタルや、ソリストとしてオーケストラとの共演のほか、様々な室内楽の公演に携わっている。また師の有森博とのピアノデュオによるストラヴィンスキーの「春の祭典」を収録したCDが2017年6月に発売、レコード芸術誌で特選版に推薦された。これまでに、緒方裕子、片山優陽、青井彰、有森博の各氏に師事。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー。2015年度公益財団法人青山財団奨学生。2017・18年度宗次エンジェル基金/公益社団法人日本演奏連盟新進演奏家国内奨学生。2019年度より、公益財団法人明治安田クオリティオブライフ文化財団海外音楽研修生。現在は葵トリオとしてミュンヘン音楽演劇大学大学院に在籍するほか、東京藝術大学大学院博士後期課程でも研鑽を積んでいる。
小川 響子(ヴァイオリン) Kyoko Ogawa, violin
奈良県橿原市出身。東京藝術大学、同大学院修士課程修了。第10回東京音楽コンクール弦楽部門第1位、聴衆賞を受賞。これまでに東京交響楽団、新日本フィル、日本フィル、東京都交響楽団などのオーケストラと多数共演。また、アンネ=ゾフィ・ムター、小澤征爾、大友直人、梅田俊明、大井剛史の各氏らとソリストとして共演。原田幸一郎、磯村和英、池田菊衛、小山実稚恵、山崎伸子、川本嘉子の各氏など、日本を代表する室内楽奏者と共演。サイトウ・キネン・オーケストラに最年少メンバーとして参加、東京フィルハーモニー交響楽団第1ヴァイオリンフォアシュピーラー契約団員を務めるなど、ソロ、室内楽、オーケストラなど様々な分野で活動している。文化庁派遣事業にてアウトリーチ活動も行う。
これまでに、塩谷峰子、西和田ゆう、原田幸一郎、漆原朝子、松原勝也、堀正文の各氏に師事。サントリーホール室内楽アカデミー第3期、第4期フェロー。2017年度ヤマハ音楽支援制度奨学生。現在はベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーに在籍、樫本大進氏の指導を受ける。
伊東 裕(チェロ) Yu Ito, cello
奈良県生駒市出身。東京藝術大学、同大学院修士課程修了。日本演奏家コンクール小学生部門第1位、及びグランプリ受賞。泉の森ジュニアチェロコンクール小学生部門及び、中学生部門金賞。大阪国際音楽コンクール中学生部門第1位、及びジャーナリスト賞、大阪府知事賞受賞。第77回日本音楽コンクールチェロ部門第1位受賞、徳永賞受賞。カルテット・アルパとして、バンフ国際弦楽四重奏コンクール2016にて、Career Development Awardsを受賞。2015年度、2016年度松尾学術振興財団より助成を受ける。2016年リゾナーレ最優秀賞受賞。東京藝大で福島賞、安宅賞、アカンサス音楽賞、三菱地所賞、平山郁夫文化芸術賞受賞。
長岡京室内アンサンブル、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、神戸市室内合奏団、藝大フィルなどのオーケストラと協演。小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾オーケストラ、また中之島国際音楽祭、いこま国際音楽祭、武生国際音楽祭、ムジークフェストなら、北九州国際音楽祭、宮崎国際音楽祭、東京・春・音楽祭等に参加。NHK-FMリサイタル・ノヴァ、クラシック倶楽部、トッパンホールランチタイムコンサート、紀尾井ホール「明日への扉」、JTが育てるアンサンブルシリーズなどに出演。
これまでに斎藤建寛、向山佳絵子、山崎伸子、中木健二、エンリコ・ブロンツィ各氏に師事。サントリーホール室内楽アカデミー第3期フェロー。ステラ・トリオ、ラ・ルーチェ弦楽八重奏団、紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー。
ヤマハ音楽支援制度2011年度奨学生、(公財)青山財団2014年度奨学生、(公財)ローム音楽財団2017、2019年度奨学生。
現在ミュンヘン音楽・演劇大学に在籍。