グールドをして“ 現代の数少ない真のフーガの名手 ”と言わしめた
ヒンデミットの謎解きを、オールヒンデミットというプログラムによって!
"ヒンデミット"という作曲家の名前を聞いて、どんなイメージを持つだろうか。不人気?難解?渋い?バッハのように超絶な“耳”をもった現代の作曲家…?
そんなイメージが先行するが、なかなか生演奏としては聴く機会に恵まれないヒンデミット。
しかし、生演奏でヒンデミットを注意深く聴いてみると、音の造型の全てに道理があり、そこには彼なりのロマンチシズムがあることに気がつく。
なるほど、あのバッハ演奏の名手 グレン・グールドが彼の作品を高く評価し、「ヒンデミットは現代の数少ない真のフーガの名手である」と、彼の対位法技術の高さを評価し、ピアノ作品だけでなく様々な楽器のソナタ、また歌曲等の録音を残しているというのもうなずける。
今回取り組むピアニスト北端祥人氏は、第6回仙台国際音楽コンクール第3位受賞後、室内楽奏者としても共演者から信望が厚い。そんな彼にヒンデミットの魅力を尋ねてみると、以下のような言葉が返ってきた。
「カオスの中にある秩序、周到に張り巡らされた伏線、現代的な建築美…彼の作品に触れ合ううちに、そのような言葉が浮かんできます。」
ヒンデミットといえば、独特な、シャープで研ぎ澄まされた響きが特徴的だと思われるが、その背後には、緻密に計算された構造美のようなものが秘められているのかもしれない。
優秀なヴィオラ奏者でもあったことでも知られるヒンデミットだが、今回は第65回ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門 第3位に入賞し、ヴィオラ奏者として第一線で活躍する中恵菜氏のヴィオラによって、その魅力をたっぷりと堪能できることだろう。
彼女からもヒンデミットの魅力について以下のメッセージをいただいたので、是非、最後に紹介したいと思う。
「ヒンデミットという作曲家はヴィオラ奏者にとって、とても重要な人物であり、彼がヴィオラの可能性を見出してくれたと言っても過言ではありません。彼の作品は理解しにくい部分もありますが、数学的に構築されており、常に秩序が保たれています。楽譜からは目に見えるように建築的に書かれています。
そして、多くの楽器に対してたくさんの作品を書き、彼の人柄を調べていくとあらゆる事に神経が行き届いており、新しい道を見つけ、突き進むものを感じます。まさに開拓者であると思います。ヴィオラという楽器は主にアンサンブルで活躍しますが、ヴィオラならではの素晴らしい作品をたくさん残してくれた彼に感謝です!今回は皆様にヒンデミットの魅力をお伝えできればと思っています。」
オール・ヒンデミットというプログラムを通して、現代最高の作曲家の一人と目されるヒンデミットという人物、その作品、その生涯の一端の謎解きをしてみようではないか。
プロフィール
中 恵菜(NAKA Meguna)Viola
京都市出身。4歳よりヴァイオリンを、21歳でヴィオラに転向。桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部卒業。ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン マスター課程修了。
Quartet Amabileのヴィオラ奏者として、2016年第65回ARD ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門 第3位に入賞、合わせて委嘱新作特別賞を受賞。第10回横浜国際音楽コンクールアンサンブル部門第1位、第12回ルーマニア国際音楽コンクール アンサンブル部門第1位、コカ・コーライーストジャパン賞を受賞。第4回 宗次ホール弦楽四重奏コンクール第1位。2019年ニューヨークで開催されたThe Young Concert Artists International Auditions にて優勝。マルタ・アルゲリッチ、ダン・タイ・ソン、クシシュトフ・ヤブウォンスキの各氏と共演。これまでに、ゆらぎの里ヴィオラマスタークラス、ヴィオラスペース、IMUSE Music Festival in Enghien、MMCJ、プロジェクトQ、霧島国際音楽祭、ミュージックアカデミーinみやざき等で研鑽を積む。
またヴィオラスペース、宮崎国際音楽祭、霧島国際音楽祭、北九州国際音楽祭、ほか多数出演。第5回 次代へ伝えたい名曲 今井信子ヴィオラ・リサイタルにて、今井信子氏と共演。 CHANEL Pygmalion Days室内楽アーティスト。Music Dialogueアーティスト。テレビ朝日『題名のない音楽会』、NHK-FM「リサイタル・パッシオ」他、出演。国内オーケストラの客演首席奏者を務める。これまでに、ヴァイオリンを久保良治、ヴィオラを佐々木亮、ヴァルター・キュスナーの各氏に師事。室内楽を磯村和英、原田幸一郎、徳永二男、堤剛、山崎伸子、毛利伯郎、山口裕之の各氏に師事。
使用楽器は宗次コレクションより特別に貸与されたMontagnana.
北端 祥人(KITABATA Yoshito)Piano
大阪府出身。2016年、第6回仙台国際音楽コンクール第3位のほか、日本ショパンピアノコンクール、リヨン国際ピアノコンクール、リスト国際ピアノコンクール等、国内外において数多くの賞を受賞している。京都市立芸術大学、同大学院を首席で修了後渡独し、ベルリン芸術大学修士課程ソリスト科を経て、同大学室内楽科を修了。ソリスト、または室内楽奏者として日本・ヨーロッパ各地で演奏を行う。西本幸弘氏(仙台フィルハーモニー管弦楽団・九州交響楽団 コンサートマスター)と共演したCD「VIOLINable vol. 5」「同 vol. 6」がFONTECより、TRIO VENTUS「シューベルト&ショスタコーヴィチ」が日本アコースティックレコーズよりリリースされている。これまでに佐々木弘美、大川恵未、椋木裕子、上野真、マルクス・グローの各氏に師事。2020年度より東京藝術大学附属音楽高等学校の非常勤講師として、後進の指導にあたっている。