ヴィオリストが抱いた、
ブラームスのヴァイオリン・ソナタへの憧憬と敬意
ヴィオリストがヴィオラで演奏する“ヴァイオリン・ソナタ”を聴いたことがあるだろうか?
今回、数あるヴァイオリン・ソナタの中でもファンの多いブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲を、安達真理氏と江崎萌子氏のデュオが取り組むこととなった。そこで、演奏に寄せたメッセージが届いているので紹介したい。
「憧れ」――ブラームスのヴァイオリン・ソナタに対して抱く気持ちを一言でと問われたら、私はこの言葉を選ぶと思います。
20歳のときにヴィオラの音色に恋に落ち、これまで幾度となくヴィオラ・ソナタを幸せに演奏してきました。
ヴィオラこそが自分の声だと心から感じられるようになった今、ふとヴァイオリン・ソナタへの想いが胸を過ぎりました。
その閃きは日増しに熱を帯び、胸の内に密かに抱えているには大きすぎるほどに膨らみ、渋谷美竹サロンと江崎萌子ちゃんのご協力を得ていよいよ実現することとなりました。
ヴィオラでも弾きやすいように少しだけアレンジをしていますが、出来るだけ作品の本来の輝きを邪魔しないよう努めたつもりです。
ヴィオラの音色で聴くブラームスの金字塔。どうぞお楽しみにしていただけたら嬉しいです。(安達 真理)
ちょうどブラームスのヴァイオリン・ソナタを初めて全曲演奏した時期と同じくして、真理さんから今度はヴィオラと弾いてみないかというお話をいただきました。
ロマン派の傑作としてヴィオラ版もよく親しまれているのが、二年前に美竹サロンで真理さんと共演したフランクのソナタですが、そういえばブラームスはこれまで聞いたことがない…。この3曲をヴィオラの音色で聴いてみたいと、そのとき強く思いました。
今まで触れたことのない温度の景色に出会えることを確信しています。
美竹サロンで演奏するときは、いつも特別な時間が待っているような気がします。楽しんでいただけますように。(江崎 萌子)
安達真理氏といえば、今年の美竹サロンの演奏会で、佐藤卓史氏とともにシューベルトの歌曲をヴィオラで演奏した。
彼女の紡ぎ出す音色からは、歌詞が聴こえ、情景が映し出され、ヴィオラという楽器のポテンシャルの高さに驚かされたものだ。
安達真理のヴィオラは慈しみ深く、いつも作品への愛情に溢れている。
そんな彼女が「憧れ」と表現したこの作品たちを、ともに演奏するピアニストとして白羽の矢を立てたのが、江崎萌子氏だ。
ステージ上の彼女はどこか哲学的で、芸術家としての在り方に美学すら感じられる。
彼女と話すと、その精神性の高さをすぐに理解できるのだ。
ブラームスの作品は一般的には重厚で内省的な音楽と言われているが、それ以上に慈悲深さや深い精神性が魅力的なのではないだろうか。
今回、人間的にも精神的にも成熟した二人の音楽家によって、新たなブラームスのヴァイオリン・ソナタの魅力を体験することになるだろう。
(渋谷美竹サロン)
プロフィール
安達 真理(ADACHI Mari)Viola
日本フィルハーモニー交響楽団ヴィオラ客演首席奏者。ソリスト、室内楽奏者としても幅広く活動している。録音作品は「Winterreise」 、「J.S.バッハ 組曲&パルティータ」、「MY DEAR」をリリース。精力的にヴィオラ・リサイタルを開催し、コンセプトを大事にするユニークなプログラミングに定評がある。
桐朋学園大学卒業、ウィーン国立音楽大学室内楽科を経てローザンヌ高等音楽院ソリスト修士課程修了(卒業試験でローザンヌ室内管弦楽団と共演) 。2013年からインスブルック交響楽団にて副首席奏者を2年間務め、2014年にバンベルク交響楽団に首席として客演。
2016年よりパーヴォ・ヤルヴィ氏率いるエストニア・フェスティバル管弦楽団のメンバーとして、パルヌ音楽祭、BBCプロムス公演、ヨーロッパツアー、CDのレコーディング等にも参加した。2019年の来日ツアーでは、各地で行われた全てのプレコンサートにおいて、五嶋みどり氏とモーツァルトの二重奏曲を披露した。
テレビ朝日『題名のない音楽会』などのメディア出演のほか、2019年には熊本城ホール開業記念公演で坂本龍一、藤原真理の各氏とピアノ・トリオを演奏し、その模様はNHK-BSプレミアムで放送され話題となった。
アミティ・カルテット、DSCH弦楽四重奏団、Ensemble FOVEメンバー。
オフィシャルサイト
https://www.mariadachi.com
江崎 萌子(EZAKI Moeko)Piano
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス、パリ・フィルハーモニーにてソリストを務めたのをはじめ、日本、ドイツ、フランスを中心に演奏活動を行う。これまでに東京交響楽団、東京ニューシティ管弦楽団、ナンシー歌劇場交響楽団、中部ドイツ放送交響楽団等と共演。
第8回ヴェローナ国際コンクール(イタリア)第2位およびクラシックソナタ賞、女性演奏家賞、第26回エピナル国際コンクール(フランス)第4位、オーケストラ賞、現代曲賞受賞。国内では第80回日本音楽コンクールピアノ部門入選、第4回東京ピアノコンクール一般部門第2位など。
桐朋女子高等学校音楽科首席卒業後、パリスコラ・カントルム音楽院、パリ国立高等音楽院にてテオドール・パラスキヴェスコ、フランク・ブラレイ、上田晴子の各氏に師事し修士課程卒業。ライプツィヒ音楽大学にてゲラルド・ファウト氏に師事、最高成績で国家演奏家資格を取得する。またメナヘム・プレスラー、マリア・ジョアン・ピレシュ各氏の薫陶を受ける。
シャネル・ピグマリオン・デイズアーティスト、Music Dialogueアーティスト、2019年度ヤマハ音楽振興会音楽奨学支援奨学生。
オフィシャルサイト
moekoezaki.com