ファゴットとピアノの叙情的な歌。
風のようにやわらかに、太陽のようにあたたかにーー
決して花形役者ではないファゴット。
実を言うと、オーケストラや吹奏楽では吹きながら自分の音が聴こえないこともしばしば。
しかしこの楽器の持つ音色は、心の隙間にスッと染み込むようだと吹きながらしみじみ思います。
人生はハレの日だけではありませんが、この朴訥とした音色の中にはどんなに沈み淀んだ気持ちも包み込んでくれる大きな力があります。
僕自身もこの力にこれまでたくさん助けられてきました。
その恩返しとして、よりたくさんの方にファゴットの名前を知ってほしい、そしてよりたくさんの方の心情に寄り添いたいという気持ちで日々ファゴットを構えています。
大編成では脇役に回りがちなファゴットの魅力をこの機会に是非、ご堪能頂ければ幸いです。
(皆神 陽太)
美竹清花さろん初の管楽器ソロ曲メインのコンサート。
若手ファゴット奏者として活躍中の皆神陽太さんの登場です!
彼の音を初めて聴いたのは、彼が首席奏者を務める東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の公演でした。
オーケストラのファゴットソロの旋律が非常に艶やかで甘美に浮き出て聴こえ、心が揺さぶられたのを覚えています。
「この音をもっと聴きたい、心から堪能できるステージを作りたい。」
その想いがきっかけとなり今回のコンサートの実現まで繋げることができました。
ピアノの渡邊智道さんは東京藝大時代の同期。息の合った演奏に期待が膨らみます。
皆神さんの演奏は、心を包み込んでくれるようなあたたかな音色が魅力的です。
ご自身に綴っていただいた文章から彼のお人柄がお分かりいただけるかと思います。
そんな皆神さんだからこそ、彼の音はオーケストラの中からでも聴き手の耳に印象的に、寄り添うように響いてくるのでしょう。
ファゴットとはどんな楽器なのか…?
皆神さんご自身も仰るとおり、普段は日の目を浴びることの少ない楽器の一つ。
一方で、多くの作曲家から愛され重用されてきた楽器でもあります。
ベートーヴェンはそんな作曲家の1人ですが、彼の交響曲では魅力的な見せ場が多々用意されており、この楽器への愛情がよく分かります。
その音色は彼も「天からの声」と表現するほど魅力に溢れた楽器なのです。
そんなファゴットの響きがピアノと融和し、美竹清花さろんとどんな共鳴を見せてくれるのかーー
念願叶っての本コンサート、もちろんプログラムも非常にこだわりを感じられます。
ファゴット曲の代表的存在とも呼べるサン=サーンスのソナタをはじめに、初めて耳にする方でも聴きやすく、ファゴットの魅力をたっぷり味わえるプログラムとなっています。
きっと心満たされる至福の時間となることでしょう。どうぞお楽しみください。
(遠藤 綾子)
プロフィール
皆神 陽太(みなかみ・ようた)Fagotto
茨城県ひたちなか市のうまれ。
東京藝術大学音楽学部器楽科ファゴット専攻卒業時に同声会賞と茨城県新人賞を受賞。第13回東京音楽コンクール木管部門入選。第33回日本管打楽器コンクールファゴット部門入選。これまでにファゴットを岡崎耕治氏、吉田將氏に師事。
現在、ぱんだウインドオーケストラ首席ファゴット奏者と、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団首席ファゴット奏者を兼任。これまでに小澤征爾音楽塾オーケストラプロジェクトや、宮崎国際音楽祭・富士山河口湖音楽祭などに出演。ティアラこうとうジュニアオーケストラ講師と長野県小諸高等学校音楽科非常勤講師を務め、後進の指導にもあたっている。
渡邊 智道(わたなべ・ともみち)Piano
大分県別府市出身。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業、
東京芸術大学卒業。
ピアニスト、作曲家。
2009年フッペル鳥栖ピアノコンクール第1位、
並びに月光賞を受賞。
2016年日本音楽コンクールのピアノ部門で第3位を受賞。