【石井 楓子さん】葛藤と自己発見、そして音の深化——石井楓子の音楽留学記


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石井楓子ピアノリサイタル

ブラームス:16のワルツ Op.39
ヴォルフガング・リーム (1952-2024):《ブラームスの愛のワルツ》(1985年作)
グリーグ:抒情小曲集より
Op.43-1 《蝶々》
Op.43-2 《孤独なさすらい人》
Op.54-2 《ノルウェー農民行進曲》
Op.57-6 《郷愁》
Op.65-6 《トロルドハウゲンの婚礼》

ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ ト長調 Op.129《失われた小銭への怒り》
ブラームス:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op.1

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気が付けばピアノがそばにあった


──── 音楽との出会いはいつ、どのようなものでしたか?


 

石井音楽との出会いについては、実ははっきりとした記憶がないんです。両親はきっと最初からいろいろな曲を聴かせようと思っていたのだと思いますが、「これがきっかけ」という明確なものはなく、気づけばピアノを弾いていました。ただ、車の中でいつも聴いていた音楽が、今もずっと記憶に残っているので、断片的なシーンはいくつも思い出せます。

スタッフごく自然に音楽とともに育ったのですね。ご両親はピアノの先生だと伺いましたが?

石井そうです。なので、家ではピアノの曲ばかり流れていましたね。

スタッフ一番最初に印象に残っている曲はありますか?

石井リズミカルな曲が好きで、《死の舞踏》や《魔法使いの弟子》とかが好きでした(笑)。

スタッフ幼少期はご両親から手ほどきを受けていたのですか?

石井5歳くらいから別の音楽教室に通っていましたが、家では両親が交互に教えてくれていましたね。

 


 


ドイツ留学の決断と、運命の師との出会い


──── 留学先(ケルン、バーゼル)はどのように選ばれたのですか?


 

石井ドイツに行きたいとは最初から思っていました。ただ、単純に「ドイツ人の先生だからドイツ音楽に精通している」というわけではないことも、次第に分かってきたんです。

スタッフ確かに、今はグローバルな時代ですし、先生の国籍だけでは判断できないですね。

石井そうなんです。国際コンクールで実績を持つ先生よりも、自分に合う指導をしてくれる先生を探したいと思っていました。もちろん、名の知られている先生のレッスンもいくつか受けてみましたが、なかなかしっくりこなくて…。

スタッフそうですよね。名がある先生=自分に合う先生、とは限らないですもんね。指導者との相性って絶対にありますよね。

石井そんな中、偶然桐朋学園でのご縁で紹介してもらった先生(メーナー教授)が、結果的に今の先生になりました。普段は静かな方ですが、ユーモアがあって頭の回転が異常に速く、面倒見も良くて、何よりも演奏を聴いた瞬間に「この先生だ」と思えたんです。

スタッフ直感が働いたのですね。とても大事なことですね!

石井その先生のもとで学ぶことになり、最初はケルンで学びました。その後バーゼルに移ったのも、先生が両方の都市で教えていたからです。先生はバーゼルに住んでいて、週に一度ケルンに来てレッスンをしていたので、私はバーゼルを拠点にすることにしました。

スタッフなるほど。本格的にその先生に師事するために移られたんですね。でも、実際に留学されて、国際コンクールや演奏活動などでのご活躍を見ると、その先生との出会いが石井さんの飛躍につながったのかなと思います。先生のどんなところが特に素晴らしかったのでしょうか?

石井そうですね…。まず、音色がすごく美しいんです。ベートーヴェンのソナタ28番を、私が「なかなかつかめないな」と思いながら弾いたときに、先生が隣で同じ曲を弾いてくださったんです。その瞬間、自然と涙が溢れてきて…。あまりにも感動してしまい、でも泣くのが恥ずかしくて、一生懸命涙を隠そうとしたのを覚えています(笑)。

スタッフそれはものすごく貴重な体験ですね!もちろん先生が素晴らしかったのもありますが、石井さんにそれをキャッチできる「感受性」や「器」があったからこそ、ですよね。

石井どうなんでしょうか(笑)。でも、先生の門下生はみんな音色が豊かで、それぞれが持っている響きに個性があるんです。それが衝撃でした。私が留学して間もない頃は、まだガチガチの音を出していて、自分でも違和感がありました。そんな状態だったので、「変わるのにどれくらいかかるのかな」と半分不安、半分楽しみでしたね。でも、環境のレベルが本当に高かったので、すごく良い刺激になりました。

スタッフいや〜、でも石井さんの演奏って、一番最初に感じるのが「音色の多彩さ」と「エネルギーの充足感」なんですよ。だから、最初はガチガチだったというのが意外でした!

石井いや〜、長く弾いている曲は良いかもしれないですが、浅い曲はまだまだですよ(笑)。でも、先生には師事して数年経った頃に「まだエネルギーを全然出せていないね」と言われました。自分の中にエネルギーを溜め込んでしまっていて、それをどう解放するかが課題だったんです。先生は、「枠のない形で放出していく」ことを、手取り足取りで見てくださいましたね。

スタッフなるほど。それが今の石井さんの演奏スタイルにつながっているのですね!エネルギーの流れが自由自在で、まるで目に見えるかのように感じるのがすごいと思っています。

石井先生の表現を使うと、音には立体感だけでなく「未来に進む音」と「戻っている音」があって、それらが層になっていくイメージなんです。あとは、聴こえているのはこの音だけど、実際に感じているのは別の音、みたいな。

スタッフうわー、それはものすごく精細な作業ですね。耳を極限まで研ぎ澄ます必要があるし、単に「弾ける」だけでは全然足りないですね。

石井本当に、音楽って深いですよね。でも、その深さが面白いんです。

 

 


留学生活での衝撃——感動、葛藤、そして自己発見


──── 留学生活で印象に残っている出来事はありますか?特に感動したこと、楽しかったこと、苦しかったことなどがあれば教えてください。


 

石井そうですね…。楽しかったことは、メーナー先生が全部答えを言わず、少しずつヒントを与えてくれる方で、自分で考えながら深めていったときに、新しい発見があって、すごく充実感を得られた時ですね。

スタッフそれは素晴らしい経験ですね。自分で答えを見つける力がなければ、一生先生に頼らなければならなくなってしまいますもんね。もちろん、それが悪いわけではないですが、自分なりの解釈を持つ演奏には、やはり説得力がありますね。

石井「こうすれば良くなるよ」と言われるのは簡単なんですけどね。

スタッフでは、逆に辛かったことは?

石井演奏の場はあるのに、自分が何をしたいのか分からなかったときですね。納得できないまま進んでしまうのが一番苦しかったです。
あとは、もともと「レベルの高いクラスに入りたい」というのが留学の大きな目標でした。その夢は無事に叶ったのですが、いざクラスに入ってみると、周囲のレベルが本当にに高くて…。最初は、クラスコンサートに出る勇気すら持てなかったんです。

スタッフそれほどまでに、周囲の実力に圧倒されたんですね、とても意外です。

石井はい。その音楽的人間的レベルの習熟度に、私は「とてもまだ弾ける状態ではない」と思って、コンサートには出席せずに、1年ほどただ客席から聴いているだけの状態でした。でも、そんな中で、無名の学生たちの演奏に涙が出るほど感動する瞬間があったんです。

スタッフそれはすごい経験ですね!日本で学んでいたときと、具体的に何が違うと感じましたか?例えば、学生の雰囲気や音楽への向き合い方など。

石井なんでしょうね…。もちろん技術的なレベルの高さもあるのですが、一人ひとりの音楽の在り方が、とても人間的だったんです。

スタッフ人間的、ですか?

石井はい。技術を磨くために練習しているというよりも、「芸術や自分自身を表現する手段として音楽がある」という感じでした。もちろん、みんなそれぞれ悩みを抱えていて、まるで患者が先生のもとを訪れるように、一人ひとりが自分の音楽人生と向き合っていました。

スタッフそれはすごい!まさに人生と向かい合うように、音楽に向き合っているんですね。

石井ええ。だから、学生同士で「先生がいなくなったら、私はどうしたらいいんだろう」と本気で話していたこともありました。音楽を学ぶというより、人生を先生と一緒に作り上げている、という感覚に近かったんです。

スタッフ確かに、内面的な部分と向き合うことで、音楽に対する努力の仕方や向き合い方も変わってきますよね。それは本当に根本的で、とても大事なことですね。

石井そうなんです。誰しも音楽人生の中で「ストッパー」をもってしまうことや、小さなトラウマを抱えてしまうことがあると思います。それを乗り越えない限り、どこかで限界が来てしまう。

スタッフ確かに…。でも、その根本の問題に向き合うのって、簡単なことではないですよね。

石井そうなんです。だからこそ、先生が本当に腹を割って話を聞いてくれるというのは、ものすごくありがたいことでした。

スタッフ石井さん自身も、ストッパーやトラウマとまではいかなくても、何か悩みや課題を抱えていたことはありましたか?

石井はい。私の場合、自分の感覚を信じることができなかったんです。

スタッフそれは、どういう感覚でしょう?

石井例えば、演奏の解釈や表現に関して、「こうしたい」と思うことに関して確信が持てないというのでしょうか。特に留学当初は、その不安が大きかったんです。

スタッフなるほど。どうやって乗り越えていったんですか?

石井先生が、音楽の「文法」みたいなものをしっかり教えてくれたんです。私の場合、その文法の知識が若干足りていなかったので、どこかで自分の感覚を信じきれなかった。でも、きちんと体系的に学ぶことで、自然と「この方向なら間違っていない」と確信できるようになりました。

スタッフそれは大きな成長ですね!理論的な裏付けがあると、自分の直感にも自信が持てるようになりますよね。

石井本当にそうですね。それまでは、なんとなく感覚的に弾いていた部分も多かったんですが、それを知識として整理できるようになったことで、演奏の自由度が格段に上がりました。

スタッフなるほど。それで、今の演奏スタイルにつながっているんですね!

 


安定したメンタル?」——実は、めちゃくちゃ緊張します!


──── 本番でメンタルを維持する方法を教えてください。


 

スタッフ石井さんのコンクールでの演奏を拝見しましたが、とても安定したメンタルで臨まれているように感じました。それこそ、まったく緊張しないタイプなのかな?と思うほどでした。コンクール期間中の心境や心がけていたこと、また印象に残るエピソードがあれば教えてください。

石井いやいや、(笑)、そんなことは全然ないですよ!めちゃくちゃ緊張しますし、パニックを起こすこともあります。

スタッフえっ、そうなんですか?

石井はい。むしろ、YouTubeなどではあまり良くない時の演奏も残っちゃっているので…(苦笑)。あれを見ると、自分でも「こんなに緊張していたんだな」って思いますね。

スタッフそうだったんですね。でも、演奏からはそんな様子はまったく感じられませんでした。

石井いやいや、実際にはすごく緊張していますよ(笑)。でも、あるとき気づいたんです。「邪念が入ると演奏が崩れる」ということに。余計なことを考え始めると、良いことは何一つ起こらないんです。
コンクールって、ある種の「極限状態」じゃないですか。瞬発的に、自分よりも上手い人はたくさんいるし、そういう人たちがいる中でどうやって自分の力を発揮するかが勝負になってくる。でも、そこで自分のベストを120%出せるかどうか、それが結果に大きく関係してくることが分かってきたんです。

スタッフなるほど。

石井コンクールって、自滅してしまうタイプの人も多いんですよ。私自身も、以前はそういうところがありました。でも、最終的には「相対的な評価ではなく、絶対的な評価を目指すべきだ」 ということに気づきました。
もちろん、結果として相対的な評価が関わってくるのは避けられないのですが、演奏する側としては「いかに自分のベストを出せるか」 に集中することが最も重要なんだと気づきました。

スタッフなるほど、とてもわかりやすい説明ですね!


音楽と一体化する感覚を目指して


──── ご自身の演奏の魅力や特性について、どのようにお考えですか?また、演奏をする上で大切にしていることなどがあれば教えてください。


 

石井これは先ほどのコンクールの準備とも少し関連しているのですが…。「人工的に作り込まれた技巧」や「演奏効果を狙った表現」よりも、なるべく土着的な、自然のままの音楽の美しさを伝えることを重視したいと思っています。

スタッフなるほど。「土着的な自然の良さ」とは、どういうイメージでしょうか?

石井例えば、すごく技巧的なパッセージがあったとしても、「これをどう魅せるか」ということよりも、「その音楽が本来持っているエネルギーや響き」を、そのまま引き出したい。ナチュラルな表現を大事にする、という感じでしょうか。

スタッフ意図的に「作る」音楽ではなく、ありのままの音楽を紡ぐイメージですね。

石井そうですね。でも、「ただのありのまま」では、さすがに演奏として成り立たないので(笑)、そこはもちろん整理していく必要があります。

スタッフそういうスタイルを持つようになったのには、何かきっかけがあったんですか?

石井うーん…たぶん、人間の感情ってすごく多面的で、簡単に「こういうもの」とは言い切れないものだと思うんです。だから、音楽においても、「感情を作る」というよりも、できるだけ「そのままの感情を自然に音に乗せる」ということを意識しています。

スタッフ例えば、喜びや悲しみといった感情を、単純に明るい音や暗い音で表現するのではなく、もっと複雑な感情の動きまで音楽に込めたい、という感じでしょうか?

石井そうですね。例えば、人間の感情の中には「ダブルスタンダード」的な部分もあって、一つの感情の裏に別の感情が隠れていることもありますよね。シューマンなどの作曲家ではそれも大事な要素になってきますけれども、私は一方で「表裏のない、すべてを含んだ音楽」も目指したいんです。

スタッフ「表裏のない音楽」…。すごく面白いですね。

石井喜びの中にも影があるし、悲しみの中にも光がある。そういう複雑なものを、できるだけ無理なく、自然に音楽の中に溶け込ませられたらいいなと思っています。例えば、人間の心の奥にある「ドロドロした部分」も、隠さずに音楽に乗せられたら、胸を打つ表現ができるのではないか、と。

スタッフなるほど…。そういう感覚を持っているからこそ、石井さんの演奏には「説得力」があるのかもしれませんね。

石井そうだと嬉しいです(笑)。もちろん、整理しないと音楽として成り立たない部分もあるので、そこは考えながら取り組んでいますが。

スタッフ長期的な目標として、どのような音楽家を目指していますか?

石井私の演奏を聴いた方が「面白い」と感じてくださる瞬間って、おそらく「演奏がその曲と一体化したとき」なのかなと思っています。それこそ今回の推薦文で「神がかり的な演奏」と表現していただきましたが、その瞬間こそが、自分にとって一番大事にしたいものなんです。

スタッフそれはまさに音楽家の使命ですね。そういった感覚は、演奏する側としても意識しているものなんですか?

石井はい。実は出そうと思って出せるものでもないんですけれども。。ただ少しでも冷めたような演奏になってしまったら、それは良くないと思っていて…。

スタッフその「冷めた感じにならないようにする」というのは、具体的にどういうことですか?

石井うーん…。例えば、「ここで感情を出すべきだ」と意図的に表現を作るのではなく、その曲が持っている感情そのものを、できるだけ純粋に表出させたいんです。実際、勉強中に「演奏は自分の感情ではなく、曲の中にある感情を表出しているだけ」だと言われたことがあります。

スタッフなるほど。よく「楽譜へのリスペクト」や「作曲家に対する敬意を持ち、作品に忠実に演奏する」という表現がありますが、それだけでは足りない気がするんですよね。

石井そうなんですよ!実際には、与えられている自由の幅って、思っているよりもずっと広いと思うんです。

スタッフなるほど、楽譜には書かれていない自由がある、と。

石井そうなんです。楽譜には当然「音符」や「強弱記号」「アーティキュレーション」が書かれていますが、そこに書かれていない「間」や「音の色彩」、そして「どんなエネルギーで弾くか」といった部分には、ものすごく広い自由な余地が与えられていると感じます。

スタッフ確かに、単なる「再現」にとどまらない、演奏家としての解釈が反映される領域ですよね。

石井そうですね。だから、その「自由の幅」をどう表現するかがすごく重要なんです。もちろん、自由にやりすぎてしまうと作曲家の意図を無視した演奏になってしまいますが、そのバランスを見極めながら、どこまで自分の表現を広げられるかを考えるのが楽しいですね。

スタッフなるほど。その自由の中で、石井さんご自身が特に大切にしているものはありますか?

石井うーん…。やっぱり「美しさと自然さ」かな、と思います。
演奏を通して「人間的な感情の表出」が自然に続いていくこと。それが、自分の中ではとても大事な要素ですね。無理に感情を作るのではなく、自然な流れの中で、音楽が感情を帯びていくことを大切にしたいです。

スタッフそれが、先ほどの「神がかり的な演奏」にもつながってくるのかもしれませんね。感情が自然に表出され、楽曲と一体化することで、聴き手にとっても特別な体験になります。

石井そうだと嬉しいですね!その場で生まれるエネルギーや感情を大切にしながら、できるだけ自然に、純粋な形で表現していきたいなと思っています。


 


何をどう弾けばいいか」がすぐに分かる時代
——留学の必要性が薄れつつある?


──── 日本のクラシック音楽界にはさまざまな課題があると思いますが、音楽家としてどのように感じていますか?


 

石井そうですね…。最近は、「この曲はこう弾けばいい」といった情報が、ネットで一瞬で手に入る時代になりました。実際、日本にも世界的に有名な先生がたくさん来ているし、海外で学ばなくても国内で十分なレッスンが受けられる環境が整ってきています。そのせいか、留学する人が減っているような気がしますね。

スタッフなるほど、海外に行かなくても、一定のクオリティの教育が受けられる環境になってきていると。

石井そうなんですよ。ただ、それでも「留学しなければ得られない価値」というのが、確実にあると思うんです。例えば、先ほどレッスンでの先生の演奏で感動した話がありましたが、海外では「地味な場所に隠れている価値ある体験」がたくさんあります。

スタッフ「地味な場所に隠れている価値」とは、具体的にはどういうことでしょう?

石井例えば、日本ではクラシック音楽のコンサートといえば、大ホールで有名な演奏家の演奏を聴く、というのが主流ですよね。でも、海外では例えば街角の音楽家の音に、教会から聴こえてくる音楽に思いがけず感動するというような体験が普通にあるんです。

スタッフ確かに、日本だと「著名なアーティストの演奏を聴きに行く」という感覚が強いですが、向こうでは「その日のプログラムを見て、興味がある演目を聴きに行く」というスタイルが多いと聞きますね。

石井そうなんです。有名な演奏家だけが特別なのではなく、いろいろな人々の演奏を普段から聞いてみようという価値観が浸透しているんです。だからこそ、日常的に音楽に触れる機会がとても多いんです。

スタッフ日本では、きちんとした場で聴くクラシック音楽というイメージが強いですが、海外ではもっと自由な環境なんですね。

石井そうなんです。例えば、レッスンのときの雰囲気も全然違います。

スタッフ日本のレッスンとの違いって、どんなところにありますか?

石井先生との精神的な距離感が近いというのは、大きな違いですね。例えば、レッスンを聴講しているときも、床に適当に座ったり、いろいろ話しながら聴いていたりするんです(笑)。でも、決して適当に聴いているわけではなく、そういうリラックスした雰囲気の中で、長時間じっくりと音楽に向き合っているんです。

スタッフ面白いですね!「クラシック音楽はこうでなければならない」という固定観念があまりないんですね。

石井そうですね。例えば、レッスン室にもパーカーにジーパンみたいなラフな格好で来るし、質問もすぐにパッと飛んできます。日本の音楽教育のように「きちんとした姿勢で、しっかり学ぶ」という形とは違って、もっと「音楽が生活の一部として根付いている」という感じなんです。

スタッフそういうカジュアルなスタイル、日本でももう少し取り入れてもいいのかもしれませんね。

石井そう思います。クラシック音楽はもっと自由でいいし、「こうでなければならない」という型を変化させていくことも大事なのかなと。もちろん、それが文化の違いでもあるので、日本のスタイルを否定するわけではないですが、こういう学び方や聴き方もあるのか…という選択肢をもっと増やしていくのは、すごく良いことだと思いますね。

スタッフそう考えると、やはり海外に出てみることって大切ですね。

石井そう思います。それから、日本語でものを考えないようにするということもやってみた方が良い気がします!海外に出ると、当然ながら別の言語で物事を理解し、判断しなければならない。その過程で、思考の仕方、感じ方も変わっていくんです。

スタッフ言語については大きいですよね!石井さんは語学が得意そうですね?

石井いやいや(笑)、私はサバイバルで乗り越えてきただけです!ビジネス用語とかは全然できないですよ(笑)。

スタッフ海外で生活する中で、一番カルチャーショックを受けたことは何でしたか?

石井いくつかありますが、一般のお客さんの音楽知識がとても深いというのは、最初すごく驚きました。

スタッフどんな場面でそう感じましたか?

石井コンサートに来る人たちが、普通に「この曲のこの部分が好き」とか、「ここはこういう解釈もあるよね」といった会話をしているんです。単に「有名な曲だから聴きに行く」ではなく、純粋に音楽を深く理解しようとしているんですよね。

スタッフそれはすごいことですね!音楽が生活の一部として根付いているからなのですね。

石井はい。そして、もう一つ大きなカルチャーショックだったのは、宗教と音楽の関わり です。

スタッフクラシック音楽は、もともと宗教と深く結びついていますよね。

石井そうなんです。教会が多いので、教会の仕事もたくさんありました。でも、そこで感じたのは、音楽と宗教の関係が単なる「伝統」ではなく、今なお信仰として生きている、ということでした。

スタッフなるほど、信仰としての音楽…。

石井例えば、ミサで演奏しているときに、信者の方々の自然な信仰の雰囲気にを文化の違いをはっきりと感じました。信仰が根付いた文化の中で、音楽がどのように位置づけられているのか、その本質的な部分に触れた気がします。

スタッフやはり、日本とは全く異なる風土ですね。


 


これからの石井楓子の取り組み──魅了されるロシア音楽


──── 今、最も魅力を感じる作曲家や作品、演奏家を教えてください。


 

石井昨年、ルガンスキーのラフマニノフを聴きに行ってから、改めてロシアの音楽家の凄さを痛感しました。あの響きの厚み、深さ、ダイナミズム…。やっぱりロシアの音楽って特別だなと感じました。

スタッフルガンスキーのラフマニノフ、素晴らしいですよね!

石井本当に!そしてつい先日も、ショスタコーヴィチのシンフォニーを聴きに行ったんですが、もう圧倒的で…カッコ良すぎました。

スタッフショスタコの交響曲は壮絶なエネルギーがありますよね。

石井そうなんですよ。でも、ショスタコーヴィチに関しては、すでに素晴らしい演奏をする人がたくさんいるし、「これは自分がわざわざ手を出さなくてもいい分野なのかも?」と思う部分もあったりして…。でも、ラフマニノフはやっぱり特別ですね。そこで、この秋にオール・ロシアもののプログラムを組んでみようかなと思っているんです。ラフマニノフをメインにしながら、他にも何か入れたいなと。

スタッフ石井さんのオール・ロシア・プログラム…めちゃくちゃ良さそうですね!他にはどんな作曲家を考えていますか?

石井今のところ、グバイドゥーリナ(1931– ロシアを代表する現代作曲家の一人であり、宗教的・精神的なテーマを色濃く反映させた独自の音楽世界を築いている)も入れてみようかなと思っています。彼女の作品も本当に独特で…。ロシア音楽ならではのあの野太さって、やっぱり他にはない魅力だなと感じています。

スタッフグバイドゥーリナとは、さすが、個性的ですね(笑)。ロシア音楽はロマンティックな側面もありつつ、あの大地から湧き上がるような重厚感に魅了されます。

石井スイスの留学先でもロシアから来ていた人が結構いて、その人たちから今も続く国の大変さや教育レベルの高さについて話を聞くこともありました。

スタッフそういう話を聞くと、また違った視点でロシア音楽が聴こえてきそうですね。

石井そうなんです。ロシアの音楽家たちって、「生きるために音楽をやっている」 という強烈な意志を感じるんですよね。彼らにとって、音楽は単なる芸術ではなく、もっと切実なものなんです。

スタッフそれこそ、死に物狂いでやらなければならないという状況の人も多いですよね。ある種の芸術で大成しなければ生きていけないという強迫観念のようなものもあるのかなと。

石井本当に、そういう世界なんですよね。例えば、家族にはもう二度と会えないという覚悟で音楽をやっている人たちもいるんです。

スタッフ日本とは、音楽家が背負っているものが根本的に違いますね…。

石井はい。社会の中で抱えているものがまったく違う。その環境の中で生まれた音楽が、あの圧倒的な力強さや深みを持っているんだなと、改めて思いました。

スタッフ個人的には、石井さんはシンフォニックな作品がとても向いていらっしゃると思うのですが…。

石井ありがとうございます!実は、ぜひ他のピアニストの方々と2台ピアノのシンフォニーにも挑戦してみたいと思っているんです。

スタッフおお、それは楽しみですね!

石井今年は三善晃さんの曲にも取り組もうと思っています。現代曲の一環として、しっかりと勉強しながら演奏していきたいと思っています。

スタッフ三善晃さんの作品、素晴らしいですよね。

石井本当にそうなんです。彼の作品はすごくシャープで、緻密に構築されているんですよね。でも、その一方で、子供向けの作品は驚くほど柔らかく、優しい。このギャップがすごく魅力的で、私もとても惹かれています。

 


 


「ベートーヴェンとブラームス」——自然と戻ってくる音楽


──── 生涯を通じて取り組みたい作曲家や作品はありますか?


 

石井そうですね…。やっぱり、最終的にはベートーヴェンやブラームスに戻ってきますね。どちらも、時間をかけて向き合えば向き合うほど、深まっていく音楽だと感じています。

スタッフなるほど。では、特にベートーヴェンのどの作品に惹かれますか?

石井ソナタの32番(Op.111)は、まだ手をつける気になれないんですよ。なぜか「まだ弾くべきではない」と感じるというか…。いつか向き合うときがやってくるとは思うんですけど、今はまだ取っておきたい作品ですね。

スタッフその感覚、すごく興味深いですね。やはり、作品の持つ「特別さ」を感じるからでしょうか?

石井そうですね。32番って、やっぱり最終到達点のような印象があるんです。演奏し始めたら、もうそれで何か一区切りついてしまう気がして…。「始めたら終わってしまう」 という怖さがあるのかもしれません(笑)。

スタッフとてもよくわかります。ピアニストにとって、きっと特別な作品なんだろうなと…。

石井実は、ソナタ31番(Op.110)の方が好きなんです。28番、29番、30番までは演奏会で取り組んできたんですけど、31番と32番はまだ手をつけていなくて。なので、この2つは特別なタイミングで取り組みたいと思っています。

スタッフブラームスについても、「最終的に戻ってくる」とおっしゃいましたが、特に惹かれている作品はありますか?

石井ブラームスのピアノ曲って、どうしても有名な作品に注目が集まるんですけど、それ以外にも面白いものがたくさんあります。

スタッフ例えば、どんな作品でしょう?

石井例えば、《シューマンの主題による変奏曲(Op.9)》 なんかは、すごく味わい深い作品ですが演奏される機会がないんですよね。

スタッフ確かに、ブラームスのヴァリエーションというと、《パガニーニの主題による変奏曲》や《ヘンデルの主題による変奏曲》が注目されがちですよね。

石井そうなんですよ。でも、《シューマンの主題による変奏曲》や8つの小品作品76のような作品には、ブラームスの内面的な魅力がすごく詰まっていると思うんです。だけど、地味すぎてあまり取り上げられない…(笑)。

スタッフ他にも、《インテルメッツォ》や《ラプソディ》のような作品の方が注目されがちですよね。でも、ヴァリエーションに興味を持たれるのは意外でした。

石井ブラームスのヴァリエーション作品って、ただの装飾じゃなくて、どこか試行錯誤のプロセスを感じるんですよね。だから、弾くたびに「ブラームスが何を考えていたのか」がじわじわと伝わってくる…。そういう意味で、地味な作品も名曲と同じくらい面白いんじゃないかなと思っています。

 


クラシックの「閉じた世界」を開くための工夫


──── 演奏会でプログラムを組む際に気をつけていることやこだわりがあれば教えてください。


 

石井最近、ソロリサイタルのプログラムを考えることが多いのですが、やっぱり世の中の大半の人って、クラシック音楽にはほとんど興味がないんですよね。

スタッフ確かに、クラシックは一部の熱心なファンに支えられている印象がありますよね。

石井そうなんです。だからこそ、たとえば私と何かのきっかけで知り合って、「じゃあ一回、演奏会に行ってみようかな」 と思ってくれた人にも、何かしら「面白い」と思ってもらえる内容にしなければいけないと思っていて。

スタッフなるほど、それも大事な視点ですよね。

石井だからこそ、プログラムのバランスを意識することがとても重要なんです。現代曲ばかりでも、聴衆にとっては「よくわからない世界」になってしまうし、逆に有名な作品ばかりでも、ありきたりなコンサートになってしまう。「現代曲と伝統的な作品のバランス」、「シリアスなものと軽やかなもののバランス」——そういう選び方を工夫しないと、クラシックの世界がどんどん「閉ざされたもの」になってしまうかなと思うんですよね。

スタッフ確かに、クラシック音楽は「伝統」として守られてきた一方で、新しい聴衆を引き込むのが難しくなっている部分もありますよね。

石井はい、だからこそ、コアなクラシックファンだけに向けるのではなくて、「クラシックを普段聴かない人にも届くようなプログラム」を考えなきゃいけないなと思っています。

スタッフそれは「顧客志向」ですね!音楽家としての表現を大事にしながらも、しっかり聴衆のことを考えているのがすばらしいと思います。そしてたしかに、石井さんのプログラムを拝見すると、すごくバランスが良いなと思いました。芸術的な深みがありつつも、聴いて楽しい要素もしっかりありますし。

石井そう言っていただけると嬉しいです!例えば、今回のプログラムでも、ベートーヴェンのエロイカ・ヴァリエーションを入れる案もありましたが、最終的に選んだ作品の方が、演奏効果も高く、ベートーヴェンのユニークな側面が感じられるので、良い選択だったかなと思っています。

 


ベートーヴェンとブラームスの、おちゃめな一面を!


──── 今回の公演のプログラムの聴きどころや、お客様へのメッセージをお願いします!


 

石井今回の選曲では、シリアスなイメージを持たれがちなベートーヴェンとブラームスの、実は“おちゃめな”一面が垣間見える作品 を意識して取り入れています。

スタッフおちゃめな一面というと?

石井例えば、ブラームスのピアノソナタ第1番。多くの人は第3番の方が壮大で迫力があるから印象に残りやすいと思うんですけど、実は第1番もそれ以上に魅力的な作品だと思うんです。前向きなエネルギーに溢れていて、作曲家としてのこだわりがすごく詰まっている作品です。

スタッフ確かに、ブラームスって重厚で深淵なイメージが強いですが、第1番はブラームスの試みが感じられて、野心や情熱が詰まっていますよね。

石井そうなんです。交響曲第1番と同じで、ベートーヴェンの影響が色濃くある一方で、時にシューベルト的な流れも感じさせたり、ブラームス自身がどれだけ試行錯誤して書いたかが伝わってくる作品だと思います。それを、今回のプログラムの中でどう伝えられるかが楽しみですね。

スタッフベートーヴェンのカプリッチョも選ばれていますが、これも少し意外な選曲ですね。

石井そうなんですよね(笑)。正直、ベートーヴェンのカプリッチョって、「わざわざ勉強しない作品」かなと思うんです。でも、バガテルもそうですが、聴いてみるとすごくユーモアがあって、普段のベートーヴェンとはまた違った軽妙さが感じられるんです。どちらかといえばアンコールピースに近いですが、そういう“ベートーヴェンの違った側面”を感じられるのも面白いのかなと。

スタッフ確かに、ソナタやヴァリエーションばかり注目されるので、ベートーヴェンの遊び心が見える作品は新鮮ですよね。
それにしても、ヴォルフガング・リームを取り入れるのはとても粋な選択だなと思いました。

石井リームはね、最初の頃はとにかく難解な作品ばかり書いていて、正直、一回の演奏会のために勉強するには凄まじい労力がかかる作曲家なんです(笑)。特に60年代、70年代は「とにかく今までの音楽を壊す」という方向に振り切っていたので、いわゆる前衛的なスタイルが強かったんです。

スタッフそういう作曲家が、なぜ今回のプログラムに?

石井実は90年代に入ってから、リームの作品はすごく“柔らかく”なっているんです。例えば、シューベルトへのオマージュを書いたり、ブラームスのワルツをモチーフにした作品を作ったり。今回取り上げるのは、その流れの中で生まれたもので、ただ前衛的なだけでなく、過去の音楽と対話しながら新たな響きを生み出している作品なんです。

スタッフなるほど、ドイツの現代音楽が「破壊」から「再構築」へ向かう流れを感じられる作品なんですね。

石井そうですね。「一度すべてを破壊したあとで、また穏やかなものへ回帰していく」 という動きが、リームの音楽の中にも見えるんです。現代音楽が提起するものを、今回のプログラムの中でどう位置付けるかが鍵になりますね。

スタッフそして、今回のプログラムにはグリーグも含まれていますね。

石井グリーグの《抒情小曲集》から、毎回違う曲を取り上げているんですが、今回も新しいものを選びました。

スタッフグリーグの音楽は、サロンコンサートには本当にぴったりですよね。

石井そうなんですよ。一小節弾いただけで「あ、グリーグだ」とわかるくらい、彼の世界観ってすごく強いんですよね。ハーモニーがとても特徴的で、急に北欧の澄んだ空気が広がるような感覚になります。

スタッフ確かに、彼の作品には「ひんやりとした北欧の風景」が見えてくるようなものが多いですよね。

石井そうですね。大作になるとちょっとグリーグさん無理しているのかしらと思う部分もあるんですが(笑)、小品にはグリーグらしさがぎゅっと詰まっていて、とても魅力的なんです。

スタッフやっぱりグリーグは小品が良いですよね(笑)

石井そうなんです!実際どんな場で弾いても「グリーグ、いいですね」って言われるんです。聴きやすく、親しみやすく、それでいて独特の美しさがある。そういう音楽を、今回のプログラムの中にちりばめることで、全体としてバランスの良いコンサートになるようにしました。

スタッフありがとうございます!演奏会が益々楽しみになりました!



(番外編1)ピアニストを目指し続け、迷いと再決断


──── 子供の頃の夢を教えてください。


 

石井12、3歳の頃までは「ピアニストになりたい!」と思っていました。でも、ちょっと疲れてしまって、「普通に学校に行って勉強や遊びをしたいな」と思った時期もありました(笑)。そして、考え直したのが20歳くらいですね。

スタッフへぇ〜!何がきっかけで、再び本気になったんですか?

石井他の道もあるのかな、と考えてみたんですけど、いろいろ試してみても、どの分野でも「上には上がいる」ということが分かってきて、結局、自然とピアノに戻ってきた、という感じですね。なんだか面白くない話ですけど(笑)。

スタッフいえいえ(笑)。でも、他にもいろいろ挑戦されたんですね?

石井いや、実際に大きく踏み込んだわけではないんですが…例えば、語学の勉強をしてみたりはしましたね。

スタッフ音楽家の方は耳が良いので、語学も得意な方が多いですよね。

 


(番外編2)癒しの時間は、猫とともに


──── リフレッシュ方法や趣味など、普段の過ごし方を教えてください。


 

石井猫が大好きで、猫が癒しですね。動物が好きなので、アニマルプラネットみたいな番組をぼーっと観たりします(笑)。あとは料理や読書、湖などの自然も好きですね。

 


(番外編3)もしピアニストになっていなかったら?


──── もしピアニスト(音楽家)になっていなかったら、どんな職業に就いていたと思いますか?


 

石井うーん……(考える)。

スタッフ子どもの頃の夢とかも、ずっとピアニストだったんですか?

石井そうですね〜。結局ずっとピアノを続けてきたので、「ピアニストになる」というのが一番自然な流れだったんですが、実は子どもの頃は特に深い意味もなく、お医者さんになりたいと思っていた時期もありました(笑)。

スタッフえっ、それは意外ですね!どうしてお医者さんに?

石井うーん……特に具体的な理由があったわけではなくて、ただ「お医者さんってすごいな」と思っていただけなんですが(笑)。確か、おじいちゃんに「お医者さんになりたい」って言ったことがあって、そのときに「もしピアノがうまくいかなかったら、もう一度ちゃんと考えなさい」と言われたことを覚えています。

スタッフでも、最終的にはピアニストになったわけですよね。他に選択肢はなかったんですか?

石井そうですね。やっぱり「好きなことを仕事にできたらいいな」と思っていたので、結局、ピアノの道に進みました。

スタッフなるほど。ピアノ以外に「これを仕事にしたい」と思っていたものは?

石井うーん……文章を書くのが好きなので、なにかライター系のお仕事とか、あとは語学の勉強も好きだったので、そちらの分野も興味がありましたね。でも、それを職業にするのはなかなか難しいなと感じたんです。

スタッフたしかに、語学が得意でも、それをどう仕事にするかはまた別の話ですよね。

石井そうなんですよね。だから、最終的には自分が続けてこられたことを仕事にするのが一番自然だと思ったんです。気づいたら、自分を一番表現できるのは結局ピアノなんだなと。

 

(2025年2月18日収録。文責、見澤沙弥香)

 

 

 


石井楓子ピアノリサイタル
グリーグ国際ピアノコンクール覇者が美竹サロンに初登場!
大地から湧き上がるような圧倒的な響き、多彩な音色のグラデーションが描く厳かな美──


2025年4月4日(金)
開演19:00
渋谷美竹サロン

公演の詳細はこちらから

プログラム
ブラームス:16のワルツ Op.39
ヴォルフガング・リーム (1952-2024):《ブラームスの愛のワルツ》(1985年作)
グリーグ:抒情小曲集より
Op.43-1 《蝶々》
Op.43-2 《孤独なさすらい人》
Op.54-2 《ノルウェー農民行進曲》
Op.57-6 《郷愁》
Op.65-6 《トロルドハウゲンの婚礼》

ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ ト長調 Op.129《失われた小銭への怒り》
ブラームス:ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 Op.1


プロフィール
石井 楓子(ISHII Fuko)Piano
神奈川県出身。
2019年第2回ブラームス国際ピアノコンクール(デトモルト)第1位を皮切りにヨーロッパでの活動を開始。
2022年第17回グリーグ国際ピアノコンクール(ベルゲン)優勝。バーゼル交響楽団、ベルゲン交響楽団、デトモルト州立劇場管弦楽団、アルゴフィア・フィル、クリスティアンサン・フィル、クラクフ・フィルなどのソリストをつとめ、バーゼルのシュタットカジノ、ウィーン楽友協会ブラームスホール、ノルウェーのグリーグホール、バルセロナのパラオ・デ・ラ・ムジカなどでコンサートを行う。
国内では第82回日本音楽コンクー ルピアノ部門第 1 位、第56回全日本学生音楽コンクール第1位、第6回東京音楽コンクールピアノ部門第2位、日本ショパンコンクール2010第2位などを受賞し、NHK交響楽団、読売交響楽団、京都市交響楽団をはじめとする国内の多くの主要オーケストラと共演。
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業。その後ケルン音楽大学、またバーゼル音楽院で学び修士課程・演奏家課程を最高点で卒業。
室内楽、歌曲伴奏、ハンマークラヴィアも学ぶ。2019年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修員。2024年に日本に帰国。2014年度大和市芸術文化未来賞受賞。第1回桐朋学園梅津賞(学長賞)受賞。2020年デトモルト音楽大学にてブラームス&ハイドン作品のCDを制作。2024年夏は、ノルウェーのロフォーテン室内楽フェスティバル、ベルゲンのグリーグ音楽祭に招かれた。ベートーヴェン、ブラームス、グリーグの作品を軸に演奏活動を行っている。
これまでにピアノを江崎光世、加藤伸佳、村上弦一郎、クラウディオ・マルティネス=メーナーの各氏に師事。2024年4月より桐朋学園大学非常勤講師。

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  • 務川慧悟によるゴルトベルク変奏曲BWV988が追加公演が決定!!メンバーズ先行予約を9/3(火)より開始!!
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  • ショパンの魂が宿る音 香りたつ音、スパイシーな斬新さ、降りそそぐ癒し――
  • ダマーズのピアノ曲~軽妙洒脱、幸せにひたる~
  • 8本の弦の「可能性」と「発見」 聖俗の対比、民族色の彩り、時を超える風の音―――
  • twitterにて、質問箱はじめました!
  • ベートーヴェン全曲、ついに今週!!「受苦」に込められた思いとは──
  • 【開場時間変更のお知らせ】2月17日(日) 鐵百合奈ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会<第1回>「受苦」
  • 【掲載報告】四国新聞1月28日の朝刊の記事《ピアノの未来見渡す演奏会》
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  • 【公演延期のお知らせ】入江 一雄プロコフィエフ ピアノ・ソナタ全曲<第2回>
  • 佐藤彦大&佐藤幸子ピアノデュオコンサート、さらに楽しむために…♪
  • 務川慧悟 三大潮流の新しい風 ~ドイツ・フランス・ロシアの音楽~
  • 浜松国際ピアノコンクールにて、務川さんが第5位 入賞!
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  • 【掲載報告】週刊エコノミスト 11月13日号「アートな時間 クラシック」
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